バイオテク世紀がくるのか?

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のキャンパス内にアッカーマッスホールという大学生協みたいなところがある。そこの大きな本屋さんで、ジェレミー・リフキンの『ハイテク・ センテュUT』5)という本を見つけた。買おうとしてレジにもっていくと、40代…

NIHでのセクハラ講習会

「摩擦を恐れ、力を恐れ、物言わぬ」人間 1998年夏にアメリカ・NIH客員研究員として滞在したとき、研究を始めてすぐに引き受け手であるNIHの研究部長が対処したことが3つあった。 第1は、A4紙1枚にプリントされた10項目のルールである。 部長がいう…

独自の価値基準や倫理基準のない日本の科学界

ワシントンのアパートで、日曜日の朝に、ソフアにひっくり返ってテレビを見ている。ハクラク家のテレビは4つのチャンネルしか入らないが、そのうち3つが日本では見かけない番 組を放映している。5チャンネルでは大きな会場に大勢の人が椅子に腰かけている…

将来飛躍する科学技術とは

「空想科学小説みたいなバカげた話をバイオ研究にもちこむな」という、読者もいるかもしれない。そこで、権威のありそうな最新の本をさがしてきた。『今後20年間に科学 技術は人間生活をどう変えるか』という1997年出版の本である。298ページもの英…

奇想天外な科学研究

話が夢のない方向へ流れてしまった。若い研究者を鼓舞しなくてはイケナイ。ここで1つ、画期的な話をしよう。例えば「ヒトの精子をチンパンジーの卵子に受精させて、チンパンジ ーに生ませた子は、ヒトかチンパンジーか新しい生物種か?」。 こういう実験は…

研究はデータベースつくり?

空調のきいた快適な家に住み、食べ物は十分にあって、過酷な肉体労働はない。痛いとか苦しいという病気もおおむね治せる。社会問題(犯罪、不正、局地戦争など)はあるけれど 、日常生活のうえで「必要」なことは満たされている。これがおおもね、日本を含め…

チンパンジーとヒトの子をつくりますか?

ワシントンに点在するスミソニアン博物館は、どこも無料である。航空宇宙博物館、自然史博物館、国立美術館など、どれも世界のトップレベルのすばらしい博物館である そ の1二つにワシントン動物園がある。もちろん、ここも無料で入れる。しかも日本の上野…

アメリカで財布を拾う恐怖

NIHにいくためワシントンDC郊外の街の公道を歩いていて、財布を拾った。朝8時ごろである クルマはビュンビュン走っているが、歩いている人はほとんどいない公道だった。財布 からドル紙幣が顔を出していた。無視したほうがよかったかもしれないけど、手に取…

日本の大学教授の給料は安い

とは言ってみたものの、以上のデータはアメリカのデータだ。というわけで、日本のデータも少しだけ書いてみよう。ます、鷲田小弥太先生は以下のように言っておられる4)。 「はっきり言って、(大学教官の)給料は安い」 「大学教官の給与は20~30代が想…

研究者に対する世間の評価は低い

1996年のアメリカの世論調査によれば、科学技術で重要な発見・発明をした人を、アメリカ社会は適正に評価していない。まともに評価していると思ってるアメリカ人は22人 しかいない。一方、過小評価だと思ってる人は74%もいるのである。芸能界やスポーツ…

コンピュータ屋さんに失業なし

他の科学技術分野に比べて年収が少しぐらい低くてもソコソコの仕事があって、安定した生活が営めればそれでいいとしよう アメリカのライフサイエンス分野で博士号をとった人の98%は就職できる。31.6%はポスドクになっている。動いている人の87%はライ…

理系の修士号はマイナス・イメージ

話が医学系に偏りすぎてしまった。もう少し幅広い範囲でみてみよう。まず、理系出身者の実際の初任給(年収)をもう少し詳しく調べてみた。1997年7月のアメリカのデータである。ウーム、生物科学を専攻して大学を出ても、年収は低いほうから数えた|まう…

M.D.は日本とアメリカで異なる

日本では高校を卒業すると、大学の医学部に入学できる。医学部入学者には浪人が多いので、入学者の平均年齢は多分19歳ぐらいだと思う。入学後6年で卒業し国家試験をパスして医師免許がもらえる この医師免許の資格を英語で言うとMedical Licenseである。 …

大学教授の収入はパッとしない

キミにツベコペとうるさいことを言う大学教官の収入を開業医の収入と比較してみよう。助手から教授(ここでいう教授は正教授、つまりFull Professorのこと)まで含めた大学教官の平均年収は4万3800ドルである。 4万5240ドルだったが、別のデータなので…

骨に住む三種類の細胞

血液中のカルシウム濃度はつねに一定に保たれており、このはたらきをカルシウム濃度のホメオスターシスと呼ぶが、ホメオスターシスに一役買っているのが骨の中の細胞である。骨には、溶かす細胞(破骨細胞)とつくる細胞(骨芽細胞)と居眠りしている細胞(…

骨折痕消失

骨は生きているので骨折部の骨代謝による改造は継続し、数年後には骨折の痕跡すらなくなることがある。痕跡消失は小児骨折でとくに早く、完全に消失がみとめられることも多い。骨折痕消失は、皮膚、血管を切って治った状況とおおいに異なる点である。皮膚な…

骨折修復のメカニズム

椅子の足や傘の骨が折れた場合、そのままにしておいてもそのうちに折れたところが元どおりにつながるということはありえない。しかし、人間の骨が折れた場合、なかでは骨がつながる。もう少し厳格に言うと、つながらないことと、つながりにくいこともあるも…

真の悪文は羊の皮をかぶっている

「わかりにくい文章」を書かねばならないのは、責任やコミットメントを回避したいからだ。しかし、こうした場合に複文すカタカナ用語を多用すると、すぐに批判の対象となる。「わかりにくい文章にしたい」という意図が、みえみえになってしまうからだ。だか…

悪文の代表選手(その2)逃げ水説明文

パソコンやそのソフトの使い方の説明にも、わかりにくいものが多い。 最大の理由は、文中に現れる専門用語の意味が定義されていなかったり、説明されていないことだ。 フォルダ、ショートカット、ロダオン・プロセス、ローカル・バス、ファイル転送プロトコ…

悪文の代表選手(そのI)「三読不可解」文

税法の条文の多くは、主語と述語の対応関係がすぐに読み取れない構造の複文にたっている。非常に読みにくい。「一読難解、二読誤解、三読不可解」と言われるゆえんだ。例えば、つぎの文章を見よ。 法人税法、第三五条の二 内国法人が、各事業年度においてそ…

わかりにくい文章の書き方

正確であり、しかもわかりにくい文章 この節の表題は、誤植ではない。わかりにくい文章を書かねばならぬ場合も、この世には存在する。言い訳をしたい場合、責任回避をしたい場合、あるいは、将来の方向づけに関して明確なコミットメントをしたくない場合など…

論理関係を正確に

わかりやすい文章を書く大前提は、ます何よりも、著者自身が内容をよく理解していることである。これは、当然のことだ。しかし、実際には、そうでもない。学生の論文では、つぎのような問題が頻繁に生じる。 (1)問題が何であるかを適切に捉えていない。 …

選択して集中せよ

一般に、「あれもこれも」と網羅しようとすると、論旨も主張もはっきりしなくなる。重要なものが何かを見出し、それに集中すべきである。これは文章に限ったことでぱないが、文章執筆ではとくに重要なことだ。 「これ以外の場合もあることを忘れている」「最…

口頭伝達ではもっと難しい

文章なら読み返すことができる。しかし、口頭伝達では、それができない。このため、聞き手は全体の構造を把握できないことが多い。 対話の場合には、聞き手はわからないところで質問できる。しかし、講義や講演では、質問しづらい。したがって話し手としては…

「わかりにくさ」の一般理論

部分と全体の関係がはっきりしない 私は、学位請求論文す課題論文、懸賞応募論文などを読む機会が多い。これらの多くは、「じつにわかりにくい文章」なので、直すことが頻繁にある。だから、「わかりにくい文章がなぜわかりにくいか」「それをどう直せばよい…

箇条書きで示す

並列する内容であることを示すには、箇条書きにするのが一番わかりすすい。例えば、「この原因としては四つのものがある」ということを示すには、四項目の箇条書きにする。 もっとも、文学的志向の強い人は、こうした書き方を嫌う。無味乾燥で実務的すぎると…

文章のまとまり相互間の関係

結論と理由の順序 2で述べたのは、個々の文をどのように続けたらよいかという問題だ。類似の問題は、文の言とまり相互間においても発生する。 しばしば問題となるのは、結論が先か、理由が先かである。 数学の場合には、定型的な書き方がある。主張を「定理…

文と文の関係を接続詞で示す

文と文との論理的な関係は、つぎのような接続詞を用いて、明瞭に示すべきだ。 ◆論理を進める場合-したがって、だから、このため、それゆえ、ゆえに、かかるがゆえに、結局。 ◆根拠を示す場合-なぜなら、その理由は、というのは。 ◆論理を反転する場合-しか…

言語明瞭、意味不明瞭

個々の文の意味はわかるのだが、文と文がどのような論理関係でつながっているのか、がわからない場合も多い。 突然別の話題が出て来て、前の記述とどうつながっているのかわからない。いくら読み進んでも、何を主張したいのか、がわからない。読み進むほどに…

修飾語と被修飾語の関係がはっきりしない

文章が読みにくくなる原因は、主語述語の関連問題以外にもある。しばしば生じる問題は、修飾語の対象が捉えにくいことだ。これも、複文の場合によく起こる問題だ。ただし、複文でなくとも起こる。 つぎの表現は、八つの異なる意味に解釈できる。 「黒い目の…