主述泣き別れシンドローム

つぎの文を読んでいただきたし。 (I)私の友人が昨年大変苫労して書いた本は、パソコンが普及し始めた頃には、異なるアプリケーションソフトが共通のOSで動くようになっていなかったため、データを交換することができす、非常に不便だったと述べている。…

学術論文での引用

学術論文においては、以上で述べたのとはまた別の意味で、引用が不可欠と考えられている。それは、論文の内容が思いつきす独り善がりでないことを示すことだ。これが、引用の第三の機能である。 この意味での引用は、単なる「飾り」以上のものだ。すべての学…

レトリックの重要性

まず何より、こうしたテクニックの重要性をつねに意識すべきだ。もちろん、意識したからといって、すぐにうまくなるわけではない。ただし、文章を読む際にいつもこのことを意識していれば、次第にうまくなってゆくだろう。意識するかしないかは、長期的には…

なぜ終わりが大切か?

終わりが重要な理由は、二つある。 第一に、「読むに値する文章かどうか」を判断するのに、最初を見るだげでなく、結論を読七人もいるからだ。それどころか、最初は飛ばして終わりから読む人もいる。岸信介元首相は、書類を後ろから読んだそうである。しつけ…

キャペンディッシュ論文の魅力的なタイトル

多くの人は、「学術論文では客引きは必要あるまい」と考えるだろう。しかし、事実は逆である。学術論文においてこそ必要なのだ。なぜなら、きわめて多数の論文が発表されているからだ。しかも、読者は多忙な人たちである。彼らに読んでもらうために、「客引…

序論・本論・結論の三部構成で

文章の構成について、昔から「起承転結」ということ、が言われてきた。しかし、これはもともとは漢詩の形式である。現在では、文学的エッセイで用いられる形式だ。論述文の場合は、これに従う必要はない。むしろ、「転」のところで別の話題が現れると(ある…

全体は三部で構成する

第2章で述べた「骨組み」は、内容面のものである。すでに述べたように、この意味での骨組みは、通常は隠されていて、外からは見えない。 外から見えるのは、形式的な構成だ。これに関して通常論議されているのは、「起承転結か三部構成か」という問題だ。こ…

話す場合も長さを意識しよう

以上で述べたのは文章の場合である、が、話す場合も、「長さ」(与えられた時間)を意識する必要がある。 論文審査のとき、「最初に五分で要旨を述べよ」と注意したにもかかわらす、延々と話す学生が多い。一五分たっても、序論しか話していない。このような…

長文-一万五〇〇〇字

「一万五〇〇〇字」は、一行四〇字で三〇〇~四〇〇行程度、四〇〇字詰めの原稿用紙では、三〇~四〇枚である。 これは、本格的な論文や報告書の長さだ。あるメッセージをさまざまな観点から述べられる。問題点の指摘だけでは不十分で、答えを書く必要、があ…

短文-一五〇〇字

二五〇〇字」は、一行四〇字で三〇~四〇行程度、四〇〇字詰めの原稿用紙でいえば、三~四枚である。ワープロで書いた文章を標準的な設定でプリソトアウトすると、A4一枚がほぼこの長さになる。 通常は、この長さの文章を「短文」という。新聞の論説や、雑…

文章には「短文」と「長文」しかない

形式面でまず重要なのは、「長さ」(文字数)である。 「何、が言えるか」は、与えられた字数に依存する。長さが内容を規定するのであり、内容が長さを決めるのではない。したがって、「どれだけの字数を使うことができるか」を、つねに意識している必要、が…

 なぜ「得意科目」でやらないのか?

会社の経営者で、会社の経営と無関係な世界情勢や、抽象的な経済理論のことを書く人がいる。 もちろん、それもいいのだが、なぜ経営の実体験に基づいたことを書かないのだろう?「日本人は農耕民族だから、アングロサクソン流の経済制度は合わない」とか「市…

私がエ-ル大学で勉強していたとき大切にしていたのは、コーヒーメーカーが置いてある小さな部屋での雑談だった。大学院生や若いスタッフが、この部屋にふらっと立ちよる。そこで「どんなテーマがいま流行っているか」という類の話が出る。これは、教室の講…

血液-脳関門

メスレンブル、のような色素を動物に注射すると、脳膜や血管の内壁は色素でそまるが、脳の実質(神経細胞やグリア細胞)はまったくそまらない。このように、脳の血管にはいった物質は、すべて脳の実質にはいるというわけではなく、血液から脳にはいるには。…

脳を支える物質代謝

私たちの身体のなかで、脳ほどぜいたく三昧をしている器官はない。しかし、その構造の複雑さ、働きの微妙さ、役割の重要さを考えると、無理もないことである。 そこで、ます、そのぜいたくさを証明するデータを示そう。脳を流れる血液の量は。一分間で、これ…

行動を操る脳

ロシアの新進の生理学者パブロフが、ノーベル賞受賞の対象になった消化腺の活動を研究していたときのことである。 唾液腺の導管を頬の皮膚にぬいつけ、唾液の分泌が滴数ではかれるようにしたイヌが、いつも餌を貰っている小使の靴の音が近づくと、あたかも餌…

新皮質と大脳辺縁系が、それぞれ別の賦活系によって、その活動水準が統御されていることがわかったが、この二つの賦活系は、決してお互いに独立であるはずはない。新皮質で形成される高等な精神活動と、大脳辺縁系で営まれる基本的な心の動きとは、お互いに…

マグンは、感見神経路を上行する感覚のイングルスそのものが。大脳皮質の活動を支えている(賦活)のではなく、網様体から大脳皮質全体へいっている別の神経路が意識の水準を支えているという。すなわち、網様体の恬動か盛んになると、意識の水準があかって…

意識を支える仕組み

いまさら、意識とはなにかと詮議だてしてもはじまらない。ある学者は、十六の項目をあげ、各項目にかなっているときに、その人には意識があると判定できるといっているくらいだ から。 アメリカの神経学者は、「自分の周囲のことと自分自身のことがわかって…

夢の仕組み

白昼夢ということがあるが、普通、夢は眠りのなかの精神現象である。そのために、夢にまつわる議論ははてしがない。 サン・ドウニのように、眠りには、必ず夢が伴なうと主張する人心あれば、ローマの暴君ネロのように、自分は一度も夢をみたことがないという…

眠りのと精神的身体的変化

ポリグラフの一例である。このグラフにも示されているが眠っているときには精神的。身体的にいろいろな変化がおこる。 まず、意識の水準がさがり、高等な精神活動も本能的な心の動きもなくなる。なお、斜線で示してあるところは、あとで説明する賦活睡眠(逆…

眠り、夢みる脳

第二次大戦中、アメリカで、数百人の兵士が参加した大がかりの断眠の実験が行なわれた。 断眠二、三日目から、いらいらしたり、記憶がわるくなったり。ひどい錯覚や幻覚がおこったりして、四日目ころには、ほとんどの者が脱落してしまったという。断眠八日と…

記銘の仕組み

それでは、これらの領域で、記銘がどんな仕組みで行なわれているか。ほかの精神活動と同じように、記銘の仕組みも、複雑な神経細胞の連鎖が作る閉回路のなかのイングルスの流れ と考えられている。そして、一つ一つのことがらの記銘には、それぞれ違っベ(タ…

記憶し、学習する脳

情報を処理する電す計算機が、おこがましくも人工頭脳、考える機械などとよばれるようになった。計算がはやくなったせいではなく、記憶装置ができたためである。 しかし、記憶ができるといっても、一つの計算が終ったらご破算しないと、次の計算にかかれない…

内臓を監視する大脳辺縁系

これまでは、視床下部が自律神経系の中枢と考えられていた。ところが近年になって、その上位にある大脳辺縁系が、実は視床下部に統御、調整的に働きかけているこ とがわかったのである。 大脳辺縁系と視床下部の線維連絡からも当然考えられることであるが、…

自律神経系の働き

内臓器官の働きは、二重支配している交感神経と副交感神経の拮抗的な働きかけによって統御されているというのが一般の通念である。実際に、心臓に分布する交感 神経が興奮すると、心臓の収縮力がまし、拍動がはやくなり、血圧があがる。反対に、副交感神経(…

自律神経系の構成

内臓王国を統率する自律神経系は、体性神経系と同じように、統合の中枢と、内臓の情報を中枢に伝える上行神経路と、そして中枢からの命令を内臓へ送る下行神経路から組立てられて いる。 上行神経路は、内臓の壁にある受容器からでる神経路であって、本質的…

内臓と内分泌を統御する脳

私たちの身体のなかには、私たちの思いどおりにならない独立国が二つある。それは内臓王国とホルモン王国である。 しかし、私たちの心の動きが、この独立国と全く没交渉だというのではない。怒ると、怒髪天をつき、顔面紅潮し、呼吸ははずみ、心臓はたかなる…

中尾の研究によると、視床下部の中央下部を刺激すると、怒りや攻撃の反応をおこし、視床下部の前部を刺激すると、恐れや逃走の反応をおこすという。この恐れや逃走の反応と、人 間の扁桃核の刺激で不安と恐怖心がおこるという観察を考えあわすと、不安や恐怖…

怒る脳

私がここで 涙がでるから悲しくなるのだ。逃げだすから恐ろしく感するのだ。とでもいおうものなら、とんでもない、と一笑にふされるに違いない。 しかし、五十年ほど以前に、ジェームズとラングの二人の心理学者が、この情動の末梢起源説なるものをまじめに…