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発達障害

 

 前項の「障害とは」で「障害」に関する考え方を述べましたが、「肢体不自出」「視覚障害」「聴覚障害」などの「目に見える」障害とは異なり、これから述べる「精神遅滞」や「広汎性発達障害」「自閉症」「学習障害]などの「発達障害」は、外からみてなかなか「見えにくい]障害です。ことばを代えるならば、なかなか「理解しにくい」そして「支援しにくい」障害です。脳性まひなどの「肢体不自由」の人には「車いず」が、「視覚障害」の人には「自杖」や「視力矯正眼鏡」が、「聴覚障害」の人には「補聴器」や「手話」「読辱]などが、「能力障害(disability)]を補う手段として存在します。

 これらは、いわば「社会的不利益(handicap)」を減少させるもので、「健常者の文化]と「障害者の文化」が共存できるように、両サイドから橋渡しをしてくれるものと考えることができます。「発達障害」の子どもたちの場合には、一般の人にも知れわたっているような「橋渡し」のための特別な手段がありません。その手段となる、「障害の理解と支援の方法」をこれから考えていきたいと思います。

 ここでは、理解に先立ち、さまざまな「発達障害]の医学的な定義と解説を述べます。

精神遅滞

 精神面の発達の遅れのことを医学的には、「精神遅滞(mental retardation)]といいます。福祉の立場での用語としては、昔使われてきた「精神薄弱」ということばが、不適切用語ということで使用されなくなり、これに替わる川語として、厚生労働省が、 1994 (平成6)年に「知的発達障害」または簡略化して「知的障害」とすると発表しました。 1999年4月I日施行の「知的障害者福祉法」より法律用語も「知的障害」になっています。

 昔の福祉制度上の概念での「精神薄弱」の定義(桜井、1988)を引用しますと、「出生前あるいは出生直後のなんらかの原因によって、発達期に知的機能障害があらわれ、能力低下や社会的不利を生じ、生活、学習、労働等の人間生活の営みに支障を來す可能性があるので、医療、福祉、教育、職業等の面で特別な援助を必要とする状態]とされています。

 医学的な「精神遅滞」の定義には、いろいろな定義がありますが、まず、国際的に承認されている「アメリカ精神遅滞学会(American Association ori Men-tal Retardation) 1992年の第9版の分類体系」の定義(アメリカ精神遅滞学会、1999a)をここでは述べます。この定義では、以下のような3つの特徴から精神遅滞を説明しています。

  1.明らかに平均以下の知的機能であること。

  2.意志伝達、身辺処理、家庭生活、社会的/対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、健康と安全、実用的な教養、余暇活動、仕事の10の適応技能の領域のうち、2つ以上の領域で制約(うまくできない)があること。

  3 . 18歳以前にあらわれたもの(その状態が認められたもの)。

 次に2.にあげられた10の領域の適応技能について簡単に説明します(表3-1)。アメリカ精神遅滞学会の定義では、発達期においてIQ70~75以下で、。かつ表3」の]。0の領域の適応技能のうちの2領域以上に障害がある場合、精神遅滞と診断するようになります。

 しかしながら、実際に必要なものは、IQの測定ではなくて、本人のニードとそのニードに応える支援です。そのために、障害の程度を示すものとして「支援の程度」の分類が採用されています。象徴的行動(話し言葉・書き言葉・記号・身振り・手話など)や非象徴的行動(表情・動作・ジェスチャーなど)を介して要求、感情、あいさつ、批評、抗議、拒否などの情報を理解したり表現する技能のことです。トイレ、食事、衣服の着脱、衛生、身だしなみ、などの技能のことです。衣類の始末、ハウスキーピング、財産管理、食事の準備と料理、買い物の計画や予算、家の安全を保ったり、毎日のスケジュールを立てたりする技能のことです。他者と社会的なやりとりをする技能です。社会的な手がかりを受けとめて、状況に応じて適切にふるまうことができたりする技能を示します。地域の諸施設を上手に利用する技能のことですOたとえば、買い物に行くこと、地域の病院やいろんなお店を利用すること、教会に行くこと、公共交通機関・公共施設(学校・図書館・公園など)を利用すること、劇場に行くこと、その他の文化的施設を利用することなどです。自分で選択・決定する技能のことです。たとえば、スケジュールを理解しそれに従って行動すること、状態・状況・予定一個人的興味などに応じて行動すること、必要なあるいは課された務めをはたすこと、必要な援助を求めること、身近に起こったことがらを解決すること自分を必要に応じて主張してその権利を守ることなどです。まずは自分の健康を保つということです。たとえば、食事に配慮すること、病気の認識一対処・予防ができること、当面の応急処置をすること性について対処ができること、運動をするなど健康を維持する努力をすること、法律・規則を守ること、シートベルトをすること、定期的健康診断(歯科的検診を含む)を受けること、犯罪から身を守ること、地域社会でふさわしい行動をとることなどです。さまざまなことを認識する能力、そして生活の中で実際に役に立つような学業能力(読み、書き、計算、身体や健康・性に関する知識、地理的・社会的知識など)のことです。自分の好みで選んでレジャーを楽しんだり、自分の興味関心の幅を広げたり、新しい娯楽を見つけだ寸技能のことです。地域社会で、パートあるいはフルタイムで働く技能のことです。仕事に応じた特殊な技能、適切な社会的行動、そして関連する仕事上の技能(業務をやり遂げる、スケジュールの理解、援助を求める一自分に対する批判を受けとめる・技術を向上させる・お金の管理・財源の割り当て、仕事に通う一仕事の準備一仕事の最中に自分をコントロールすること・仕事仲間との対人関係を作ること)のことです。(アメリカ精神遅滞学会、 1999c)

 以上が、アメリカ構神遅滞学会の定義より、引用したものですが、実生活においても構神遅滞の人の行動は、知能の程度よりも生活の適応行動力に左右されることが多いことが実感されます。こうした適応の能力はそれまでにどのような経験をしてきたのかによって、大きく左右されるため早期からの教育的な配慮が必要です。

『保育に生かす心理臨床』より