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自閉症

 

 前項で簡単にふれました自閉症児の行動特徴について、「3つの領域の障害

(社会性・コミュニケーション・興味関心や行動パターンの異常)]を中心にして、説明していきたいと思います(内山・桑原、2000)。

(1)社会的相互交渉の問題一一一人とのやりとりをすることが苦手

 他人への関心をもちにくいのが特徴です。人が関わっても知らんぷりをしているように見えたり、一人遊びが多く、子どもどうしてやりとりをして遊ぶことが苦手です。人に興味がないわけではないのですが、人とどう関わってよいかわからず、一人でいることの方を好みます。人と自分を対比して感じたり、考えたり、人との関係性の中で物事を考えていくことが苦手です。また、「相手の立場を自分に置き換えて考える」ことや、反対に「相手から自分はどう見られているか」ということを感じたり考えたりすることがむずかしいわけです。社会生活をしていくうえで、相手の気持ちや自分を客観的に考える力は必須のもので、本来自然に備わっている力です。こうした能力が欠けていることから幼稚園・保育園や家庭でもさますまな「変な」[困った]行動が発現されてきます。

 他人への関心をもちにくいことや、人との関係性の中で物事を見ていくことができない(相手の立場に立てない)結果として、たとえば、バイバイの仕方が変(手のひらを自分の方に向けてバイバイしてしまう、手の振り方がおかしい等)、模倣が苦手、ごっこ遊びができないなどのことが認められます。

 しかし、他人への関心が少ないにもかかわらず、「自分がこんな行動をしたら、相手(保育者の先生や父・母などまわりの大人たち)はいつもこんな反応をする]といった周囲の人びとの反応のパターンはよく覚えていて、自分から、周囲の注目を引こうとする言動をすることも多くあります。たとえば、お集まりの集団活動には参加しないですどもたちの輪から離れていますが、教室のドアを開けて外に飛び出そうとすると、かならず先生は追いかけてくれることを知つています。

 ひとり言を言うことが多いのもよく見られる特徴です。テレビのコマーシャルや、クルマや電車の名称を次々と、だれに話しかけるともかく言っている子どももいます。時には、[やーね、もうまったく][お片づけ、早くしなさい]など、どこかで聞いた命令口調のことばを繰り返して言っていることもあるでしょう。これらは、を意識した上での、意味のあるコミュニケーションとしてのことばではありません。電車の中で、車掌の「次は横浜、横浜、大宮行き京浜東北線は3番線に…」などの車内アナウンスを覚えていて無意味に大声
で言ったり、ぶつぶつひとり言を言って、横についているお母さんが必死でとめようとする光景も見られます。保育者やお母さんはついつい気になってしまい、「静かに!」「やめなさい」などと注意をしがちですが、あまり効果はありません。まったく反応しないか、口に手を当てて、視覚的に“しーつ”という動作をして見せることでおさまっていくこともあります。

 また、一般に 自閉症の子どもは[視線が合いにくい]というふういわれています。確かに相手の目をきちんと見て話をしたりすることが少なく、すぐに目をそらしてしまいます。しかし、視線がまったく誰とも合わない自閉症の子どもはいないと筆者は臨床経験の中から感じています。その子がを何か意味のある存在として意識したときや自分がとても楽しいことをしていでやった卜’と思ったときなどは、相手の目を見たり、それを子伝ってくれたそばにいる大人に二コッと笑いかけることもあります。

 いままで述べたような、人との接触を嫌う「孤立型」タイプの「白閉症」とは反対の[積極・奇異型]タイプ(Wing、 1998b)の自閉症の人もいます。このタイプの自閉症の子どもは人に積極的に近づいていきますが、同年齢の子どもよりも多くは、自分のことを世話してくれる大人、つまり自分の親や他の子どもの親たち、保育者たちに一方的に自分の要求や興味・関心のある事柄などを話したり関わっていきます。自閉症の子どもの多くが感覚の異常をもっていますが、このタイプの子どもの中には触られることには敏感であっても自分からそういった大人たちへやたらにべたべた接していったり、強く抱きしめたりします。つまり、他人との適切な距離感のとり方がわからないのです。この「積極・奇異型」タイプの子どもの中には人との接触があるので、消閉症」という診断を受けにきてしまった子どももときどきいます。

『保育に生かす心理臨床』より