読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「言語性LD」

「言語性LD」とは、一般に視覚認知(主に絵や図形・記号などの理解・表出、・操作など)のよさに比べて、ことばに遅れが見られるような発達上の偏りがある場合に使われることが多いようです。具体的には、①ことばの理解と表出の遅れがとくに目立つ場合、②ことばの理解は年齢相応によくても、ことばの表出だけが遅れている場合、③ことばの理解と表出は十分できても、字そのものがうまく読めない、したがって書くことも苦手な場介、①話子ことも理解することも読むこともできるけど、書くこと(字の形が誤っている、鏡文字が目立つ、特定の文字がどうしても書けないなど)だけが苦子な場合があります。まとめると、①言語理解・表出の遅れ、②言語表出|の遅れ、③読みの障害、④書きの障害、に大きく分類されます。算数(計算)の障害が5番目として、これに加わることもあります。

 次に、「非言語性LD」(中根、2000)とは、言語面での機能(話す、聞く、読む、書く)は優れているのに非言語面の機能が劣っている子どもたちのことを示します。この非言語面の問題とは、左有・前後や東西南北のような方向、自分の身体の位置などの概念が身につかないなどの状態です。時間の判断(時間の意味がわからず遅れる、土地の感覚(いつも迷ってしまう)、関係の判断(大一小、遠一近、重い一軽いなどの判断)、位置感覚(東西南北の感覚)、運動能力(歩く、走る、はねる、登る)、手先の器用さ(ハサミを使う、ボタンかけ、社会的行動(協調性、注意力、適応力、社会的な相互関係のまずさ、状況理解の悪さ)が著しく苦手であったり、自然に身についていかないといった特徴があるということです。

 この「非言語性LD」については現在多くの議論がなされており、どこまでを非言語性LDとするかが専門家の間では問題となっています。多少専門的になりますが、運動や手先の器用さの問題は医学的診断基準では「発達性協調運動障害、あるいは運動機能の特異的発達障害」であり、社会的行動の障害は「広汎性発達障害自閉症スペクトラム障害)」の概念でとらえたばうがよいのではないか、という議論があります(杉山、2000a)。

 また、「注意欠陥多動性障害ADHD)]がある子どもが学齢期になり学習障害の様態を示寸ことも多くあります。もちろん、医学的な診断名とLDというのは、しばしば合併しうることではあります。計算を含めた言語性のLDというのは、医学的な診断とも合致しや子く、割合とわかりや寸いですが、視覚認知の発達が遅れて、距離感および方角・時間感覚が障害されていて、それが原囚で社会性に問題が生じる非言語性のLDというのは、医学的な診断名でこれに対応するものがなく、定義も現段階では、まだはっきりしないようです。

 上記に述べました定義のように一般的には就学前にLD児だと断定することはできませんが、就学後の学習障害の問題を予測することは可能です。 LDになる可能性が疑われる場合(LDリスク、LDサスペクト一一LDになる可能性のある子ども)は児童精神科医や心理言語専門家などのくわしい心理検査や行動観察、言語検査、実際の学習能力や情報処理の力などのチエックを受けることが必要です。就学後に予測される問題を未然に防ぐために子どもへの直接的指導に加えて、保護者や保育者たちへどんな対応をしたらよいか、適切な対応法などについてのアドバイスなどを受けておくことも重要です。というのは、これらのLDリスクの子どもたちはその発達上の問題ゆえの、理解の困難さを抱えており、幼児期に子でに自信をなくしていたり、できないことから不安を絶大子感じていることが多く情緒的に不安定になっていることがあります。このような二次的な症状を防ぐためにも、まわりの人たちの理解と適切な援助が必要だからです。

 ただし注意しておきたいのですが、幼児の場合は、発達するにつれて状態がかなり変化していくことも多くあります。当初、言語の表出だけが少し遅れていて、言語性LDリスクかなと思われていた子どもが、経過観察中に言語の表出が伸びて、表出が改善されると、協調運動の問題や社会性の問題が顕著にあらわれてくる場合もあります。医療機関を受診すると今度は、高機能広汎性発達障害という診断を受けたりすることがあります。以上のような例もあるために、幼児期に「学習障害」と断定的に診断することはできませんし、診断には他の障害と同様に慎重でなければなりません。