保育現場での具体的対応

 

 保育現場での相談で、「保護者への対応」の次に多いのが、「集団活動に参加できない」「行事に参加できない」「かんしゃくやパニックを起こしてしまう」「まわりの子どもたちへの理解はどう進めたらよいか」などです。

 「気になる子どもたち」の「気になる行動」が明らかに「困った行動」になるのは、保育活動や他の子どもたちの活動を邪魔してしまう行動です。「困った行動」をます記録して、分析していくことも対応法を考えるのに大切です。誰にとって困った行動なのか、いつどのようなときに起こるのか(登園時、降園時、給食時、自由遊びのとき、お集まりのとき、製作などの課題のときなとつ、どこで起こるのか(教室内、廊下、職員室、園庭、園外活動時、家のどこで)、どのような状況で起こるのか(先生が指示するとき、友だちがじゃまするとき、先生以外の大人が入ってきたとき、等)を、時間をとって記録してみると、その子どもの問題となる行動を予測することも可能になってきます。予測できるようになると、その原囚となるようなことを先にその子どもに知らせておくなど、そのような行動への対策がたてられます。では、次に[困った行動]への具体的な対応方法を考えてみましょう。具体的対応法は子ども一人ひとり、状況によっても異なりますので、ここに書かれたことを参照して、保育現場ではその子どもに適しか方法を工夫して取り組むことが必要です。

 1 集団活動への参加

 集団活動に参加しない子どもにも、自閉症の子ども、知的障害のある子ども、行動に落ち着きがない子ども、知的障害でも自閉症でもないのに何か集団活動を嫌がる子どもなど、いろいろいると思います。ここで、なぜ集団に入れないか、その理由と対応について考えてみましょう。

(1)説明・指示が理解できない

 先生の言っていること、先生の説明や指示が理解できなくて、何をしたらよいかわからないので、不安になり集団活動に入れないことが考えられます。自閉症・その他の広汎性発達障害の子どもにはことばの理解が困難な子どもが多くいます。また、 ADHD (多動性障害)の子どもの場合にも集団での活動がむずかしく、指示に従えなかったりします。そのため、知的障害自閉症を含む上記の障害が疑われる場合には、子どもたち全体に先生が話した後にもう一度その子に個別で言ってみるようにしてください。

 これからすることを見せたり、やっていることをそばで教えてあげたりするといいでしょう。子どもによっては、ことばだけの指示ではなく、具体的なもの(実物)、絵や文字を使ったカード、写真、動作などを組み合わせて、子どもの目、耳、身体を通して教えていくことが必要です。

(2)周囲の動きが把握できない

 次に自閉症や広汎性発達障害の子どもに多いのですが、ことばの理解の困難さに加えて、子どもたち全体が何をしているか、よく見えずに状況がわからなくて、不安になってしまっていることも多くあります。細部はよく見えるのだけれど全体の把握が困難という特徴をもつ自閉症の子どもによくみられます。自閉症の子どもの中には、高いところが好きで机の上に登って、そこから他の子どもたちのお集まりの様手を見ているという子どももときどきいます。これは抗重力のアンバランスという感覚の問題も考えられますが、クラスの子どもたち全体の動きを、見や寸い高い所から状況を把握しようとしているのかもしれません。こうした場合もいまみんながやっていること、やろうとしていることを、わかりや寸いことばで説明したり、実物や絵で示子とよいでしょう。

(3)人が多くいる場所が苦手

 これも自閉症・広汎性発達障害の子どもによく見られます。自閉症の症状として、人との関わりの障害、言語コミュニケーションの障害、想像力の障害(同一性保持)などがあげられますが、人と交わることがなかなかでき子に人の中に入っていくことに不安を強く感じる子どももいます。このような子どもについては、あまり無理をせずに徐々に不安をとりのぞきながら集団に近づけていきます。手に何か持つことで安心しているならば、それを持たせて集団に入れてあげてもよいのです。また、お集まりのときに他の子どもたちの輪の中ではなくて、多少離れたところにその子どもが座る場所を決めてみてもよいと思い圭寸。その子どものマークのついた椅手を同じ位置におくこともしてみてください。けじめは教室の外からちらりと見ていた子どもが、教室内に入り、部屋の片隅で見ていたらしめたものです。次第に近づいてきます。ただ、2、3日で入ってくるようになるとは考えこいでください。 1か月も2か月もかかります。長い目で見守ってください。

 また、集団の人の多さが原因となるもの  そこからくる音、ざわつき、歌声、挨拶の声が耐えられないものとなっている場合もあります。発達の未熟さのある子どもには、感覚の異常がよく見られます。音が耳に突き刺さるように聞こえてしまっていること(聴覚過敏)もあるのです。私たちですと、加わいい声と聞こえる声でも針で刺子ような不快な音として聞こえるかもしれません。その場合も徐々に價らしていくことも必要です。ただ無理をしないでください。