こだわりがある

 

 砂場に行くとずっと一人で砂を無心にいじっている、水が大好きで、教室や廊下の蛇口に飛んでいって他の子どもたちがいろいろな活動をしていてもまったく眼中になく、ただひた子ら水を子で触りながら楽しんでいる、雨の後の圉庭にできた水たまりに足や手を入れてニヤニヤしながら全身をびちゃびちゃにして、いくら注意してもやめようとしないなど、水や砂が異常に好きな子どもも圉に1人、2人はいます。これは自閉症や広汎性発達障害の特徴の一つであるこだわり(同一性保持)と共通ですが、砂や水は触覚を使った自己刺激的な感覚遊び、つまり水や砂の感覚を一人で楽しんでしまっている遊びと考えられます。

 このような感覚遊びは、自閉症の人で仏年齢とともに変わっていったり、軽減したりするため、脳の発達の未熟さからくるものと推測されます。自閉症の子どもでもこのような感覚遊びを子っと続ける子どももいれば、成長するにともなってまったくなくなる子どももいます。また、 ADHDと診断される子どもでも幼児期にはこのような感覚遊びに没頭していたりすることもあります。

 こういったある種の自己刺激的な感覚遊びは、人といっしょに砂山を作るような砂場遊びや、プールで水のかけ介いっこをするような、意識的な遊びとは異なります。例をあげるなら、指しゃぶりや性器いじりと同しような感覚と考えてもよいかもしれません。これは年齢の低い子どもや知的な障害のあったりする子どもに共通して認められる特徴です。こうした感覚遊びで保育者が困ることには、教室内や廊下での水遊びは、床や壁を水浸しにしますし、他児との活動への参加を阻んでしまいます。

 手を洗うとき以外は教室内や廊下で、水で遊んではいけないことを教えるためには、蛇口に器具をつけたり、廻らないようには子しておくことも効果があります。また、使うときはカードを見せて、手を洗うことを教えます。「いまは水は使えない」という[×]マークを蛇口に貼っておいて「見せる」ことも、なんらかの障害がある子どもの場合には必要です。

 また前述の自傷行為や他害行為などの項でも述べましたが、その子どもの好きな遊び、積極的に楽しめる身体を使った遊びなどをすることで、自己刺激的な感覚遊びに没頭してしまうことを少なくすることが可能となります。子どもが不安なく過ごせて、その子なりの活動を保障する環境を整えることが一番ではないでしょうか。

 自閉症や広汎性発達障害の子どもに多いのですが、水や砂以外に電車やクルマなどの乗り物、昆虫、マーク、色などにこだわる子どももよく見られます。絵本は乗り物の本しか見ない、昆虫の図鑑を飽きることなくページを次つぎにめくって見ている、クルマを一直線に並べて床に寝そべって横から見ている、プラレールだけでしか遊ばない、など遊びも隕られており、他の遊びに切り加えることができない子どももいます。このようなこだわりも上述のような同一性保持の症状の一つです。

 このような自閉症や広汎性発達障害の子どもに こだわっている活動を無理にやめさせることは、なかなか困難です。製作活動や集団活動をするにも、時にはその子どもがいま夢中になっていることに関連させたなんらかの活動への参加を促すような工夫も必要です。もし子どもが手にクルマを握って膃さない場合などでは、無理に子からもぎ取るのではなく、いまはクルマを他に置いておいて、その活動が終わったら返子ことを約束して子どもが納得した上でクルマを手放させることが必要です。また両手を使わなければならない楽しい活動をしていくうちに 自然にクルマを子放していることがありますので、軽く声かけしてクルマを他の場所に置くこともできます。活動に参加した後に参加できたことをほめて、クルマを返してもよいでしょう。

 物へのこだわりではなく、同じ質問をこだわって何度も繰り返す子どももいます。同じ質問を繰り返すのは、質問をすることでとのコミュニケーションをとっていると感じているかもしれませんし、また、質問にいつも同じように答えてもらうことで安心しているのかもしれません。自閉症の子どもではなにかしら不安なとき、同じ質問・同じ答えに固執することがあります。その子どもがその質問を繰り返子ことが何を意味しているのか、「ああ、また同じ質問か」と思う前に ます保育者が考えてみることが必要です。子どもが遊んでほしい、保育者の注目を引きたい、関わりたいと思っているようだったら、一時の間でも手をとめていっしょに遊んだり活動してみてください。また、子どもが次に何をするかが理解できずに不安であるようならば、写真や絵カードを使って次の活動をていねいに教えることが必要です。その子どもなりのスケジュールを示すカードや表を作って、先を予測できるように見せてあげことも必要です。

 以上のように発達障害の子どもたちは、幼稚園や保育園の中で保育者が予想もしないようなさまざまな[変わった]「困った」行動を見せてきます。基本的姿勢として、その子どもの行動をよく観察して何がしたいのか、訴えたいのかを保育者が理解していくことが、ます必要です。つまり「感度のよい」保育者であることです。「困った」行動があった場合、ます最初に疑ってみることとしては、もしかするどその子がいまやるべきことをちゃんと理解できていない”からそうした行動になってしまっているのではないかと考えてみることです。ことばの理解や表出|につますきのある子どもの場合には、結果として「困った」行動になってしまいます。ですから、子どもが不安をもたないように環境を整備して、子どもが少しでもその子なりに園の活動に楽しく参加できるようにしていくことが必要ではないでしょうか。