シンボルで単語をふやす

 

 最近,アナログ時計がカムバックを始めた。かつて猫もしゃくしもデジタル時計を求めたものであるが,おもしろいものだ。デジタル時計は瞬間瞬間をプツリと切るが,アナログ時計
では連続が生かされ,時間の経過を伝える空間があり,“温もり”を感じさせるというメリットがある。価値観を抜いて考えれば,デジタルは「点」で,アナログは「線」である。

 日本人学生のボキャピルの方式はデジタル思考である。

 aback, abacus, abandon, abase, abash, a!)ateと,お互いに関連のない単語を頭から覚えていくというやり方だ。これではanalogueに到達するまで何ヵ月かかることであろうか。

 これに対し,英語のシンボルを増やすことにより単語を増やしていくという私のシンビル(symbol building の略)はアナログ思考の応用ともいえる。

 次に掲げる2つの例文の中には,たまたまsymbolという名詞が使われているが,わからない単語でもシンビルにより覚えられるという証明をしてみたい。デジタル思考が抜けきれない
白帯英語では, symbolは「象徴」に過ぎないが,アナログ思考で鍛えられた黒帯英語の使い手が, symbol という言葉を使えばそこには,動きとパワーが感じられる。

 最初のサンプルは1986年6月9日付の『フォーチュン』誌のLetters to Fortune 欄に登場したものだ。

『上級をめざす英会話』松本道弘著より