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ボキャビル派対シンビル派

 

 もう一つ諺になるのが, principlesとchutzPahである。

 principlesはデジタルでいけば「原理」「原則」だが,アナログでは歴史的連続性が加わり「譲ってはならぬ信念」という訳になる。 He has no principlesは白帯英語では,「彼は
なんら原則を持たぬ」となるが,黒帯英語では,「彼は信念をコロコロ変える人間だ」となる。The Japanese have no principles.といえばデジタルでいけば,「日本人は原則がない」
となるが,アナログでいけば,「日本人は節操がない」となる。

 chutzPahは,図々しさ,根性と通常ネガティヴな意味で使われるイディッシュ語だが,実際は必ずしもそうではない。私は,日本人の「腹」をユダヤ人に説明する時に,この
chutzpah (ハツパと発音する)をたまに用いる。彼らは首を大きくタテに振る。

 クオモの死刑反対論には反対するが,クオモがその信念を貫く咨に,人々がしびれるのだ。そして氏のド根性と腹(“壯"という漢字の方があてはまりそうだ)に感服する。この辺りの英
語はアナログ思考でシンビルに励んできた有段者しか使えない。黒帯英語をめざす人は,この個所を何回も声を出して読んでいただきたい。

 Voters disagreed with Cuomo ])ut admired his principles and his chutzpah・

 アナログ思考で英語をイメージでとらえると,見えないものが見えてくる。それぞれの単語のシンボルが浮び上ってくる。語彙も自から増える。アナログ思考の“妙”である。

 さて,語彙を増やすためデジタル思考のボキャビルで臨むか,それともアナログ思考のシンビルに挑戦するか

ー-その判断ぱあなたに委ねる。

 ただ,参考のために,従来のボキャビルを踏襲した場合のリスクと私の勧めるシンビルに賭けてみた場合のリスクを対比させてみたい。

 ボキャビル派は,短期決戦型で,筆記試験のための詰め込みには強いが,覚えた単語がデジタル風に頭脳の中に貯蔵されているので検索が困難である。

 ねじりハチ巻きで覚えた単語だから忘れるのも速い。そのような死滅寸前の単語を忘れないよう必死に努力しているくらいだから,とうてい使いこなせない。単語の頻度数を無視して
,覚えたものであるから,流れるように話されるFENの英語が聞きとれない。読み,書き,聞く,話す,という4技能はすべてダメになる。 したがって有段者は永久に望めない。

 シンビル派は,その反対に一夜漬けには弱いかもしれないが,速読,速聴で鍛えた英語のかたまりが,アナログ的にストックされているので,一つの単語を検索しようとしても関連表
現が情報と共にいもづる式に出てくる。自然に身についた英語だから忘れにくい。生きている単語だから,使える。頻度数の高い英語ほど記憶に残り,使えるので,書かれ,話された英
語はネイティヴにも自然に映る。ネイティヴのリズムで学んだ英語だから,英語のリズムが自然に耳に入る。有段者を目ざすならアナログ式のシンピルに限る。

『上級をめざす英会話』松本道弘著より