英米のユーモアの差

 

 英語の概念をシンボルとして捉えるために,私はなんとなく意味がわかっているつもりでも,英英辞典を用いて確かめることがある。更に慎重に,イギリスの英英辞典とアメリカのそ
れを併用しながら微妙なニュアンスの違いを感じとることがある。そして,どちらの辞書がより親切か勝負させることがある。今回は私のお気に入りの2つの英米の英英辞典を使って,
「笑い」に関する,6つの単語を引いたが,イギリスに軍配が上がった。勝負は私の主観によるものだが,解説表現も微妙に違っており,イギリス人とアメリカ人に話しかけたような気に
なる。

 (1)

 ある80歳の女未亡人(widow)が,同じく80歳の男未亡人(widowcr)とブラインド・デートしてドライヴ・イン映画を観た。

 “3回も顔を殴ったなんて,相手はひどいことを言ったの”

 “No. I thought he was dead."

(2)

 アメリカのコメディアンがイスラエルを訪れた時に車で猫をひいてしまった。

 “I'm sorry. Is there anything l can do?”

 と許しを乞うたところ,相手のイスラエル人はこう答えた。

 “Mister, you can catch mice?”

 これは,実話らしいが,冗談になってしまっている。

 ユダヤ人のユーモアの研究家として知られているLeoRosten氏は,その著書“The Joys of Yiddish” の中で,

 It adores irony because the on!y way the Jewscould retain their sanity was to view a dreadful worldwith sardonic eyes. (ユダヤ人が正気を保つ唯一の方法は恐
ろしい世界を蔑んだような眼で眺めることであるから,アイロニーをこよなく愛するのだ)と述べている。

 自然を愛し,「和」をモットーとした人間関係を是としてきた日本民族と発想が正反対になるのは当り前である。

 テルアビブ大学では,異文化を知る手段として教室でユーモアを教えている。心理学者もユーモアこそ,人間の行動原理を解明する上で有効な手段になりうると述べている。 とにか
く,厂ユダヤ・ユーモア」の研究はますます華やかになりつつあるようだ。 RosLenに言わせると,世界中のユーモアを寄せ集めて分析したところ,最もユダヤ・ユーモアに近いの
が,中国人のユーモアであったとのことである。

 どちらの文化も闘いや飲酒に無関心というところでも一致しているらしいが,アイルランドのジョークには,drinkingにまつわるものが多いという。たフランスのジョ-クには, love,
seχそれに浮気(extra-marilal affairs)が多く,イギリスではmalapropism (awrong use of a word, in which a word is used which sounds likethe correct word, but
means something quite different)が好まれている。