ユダヤ英語に挑戦する

 

 では黒帯英語でユダヤ人に挑もう。

“Why do the Jews answer with why?”

“Why shouldn't the Jews answe「with why?”

 これでも歯が立たない。だがこれもユーモアのつもりである。

 アメリカ大使館に勤務していた頃,あるユダヤ人の通訳をしながら地方巡業をしたことがある。 大阪のアメリカン・センターで,講演の直前,緊張した面持で私が現われ,「さあ行
きましょう。パーレスさん」と言った。

 その時,l don't need you tonight. という。ハッと驚いた。これまでの通訳がだめで,東京から,通訳者と・して私が不適格だと言われたのかと一瞬心臓がドキンとした。だが,少
し間をとってパーレス氏は, I speak Span-ish.と答えた。冗談だった。ホッとした。

 とにかく,ユダヤ人のジョークには,呼吸が乱される。私もユダヤ人とのつきあいが多いから,いつの間にかジョークが使えるようになった。

 “Can 1 ask you a question, Mr. Matsumoto?”

 “One dollar.” (laughter)

 “Another question. A serious olle.”

 “Two dol]jlrs.”(laughter)

 シリアスな質問であれば,両手を出し,「2ドルでどうですか」と笑わせる。

 このような冗談は,決して品のいいものではなく,読者諸兄に勧める気持は毛頭ない。だが,相手があなたのユーモア感覚を試すために,いつこのようなジョークを投げかけるかわか
らないので,奇襲攻撃にあわてふためかないための予行演習だと思っていただければそれでよい。

 ジョークを受ける訓練はいくらやってもやりすぎることはないが,ジョークに味をしめて日本の社会で日本人相手に乱発してはなるまい。

 「私はジョークで会社を辞めました」

  となりかねないからだ。

『上級をめざす英会話』松本道弘著より