インタビューの英語

 

真実とは痛いもの

 インタビューの仕事が大好きなのは,学べるということだ。またジャーナリス}という面をかぶると,どんな立場の人でもインタビューができるという強味がある。まさにペンは武器
である。ところが,ジャーナリスティック・インタビューは恐れられ,常に相手を怒らせるというリスクを負う。

 そのリスクを負いたくなければ,やらせの本を書くことだ。その代り読者を愚弄し,それが発覚すると大したジャーナリストではないというレッテルを貼られるというリスクを負わね
ばならない。

 世界でも最も恐れられる女性インタビューアーのオリエナ・フェラチ女史(イタリア人)は,「インタビューは外科手術。傷つくのは当り前。真実とは痛いもの(Truthhurts)」という
非日本的なインタビュー哲学を持つ。

 全米トップの稼ぎ手と言われるバーバラ・ウォルターズ女史(ABCインタビューアー)は,インタビューが終ったあと,その人とは二度と顔が合わせられなくなる,というリスクは
常に存在すると語り,プロ・インタビューアーの厳しさの一端をのぞかせる。

 とにかく,美人モデルに向かって,無表情で“Do you think you are beautiful?” と訊き,意表を突かれた相手が,イエスと答えると,「あなたのどこが美しいと思うのか」という
調すで,メスを入れていく。

 こういう調すで一度でも日本人の大物をインタビューすれば,プロとしての生命は1週間ももたないことだろう。

 日本人が相手である場合は,突っ込んではいけない。黒柳徹すさんは「相手のいやがることは絶対訊かない」と言う。そう,日本ではまず相手に奸かれることだ。呼吸が合うまで待つ
ことだ。相手がいい気分になって話し始めるまで待つに限る。

 「訊く」ことはrisk-taking。「待つ」ことはrisk-avoid-ing。だから,日本という場で行なわれる,和やかなインタビュー(お座敷インタビューと呼ばれる)では,どういでも慣れ合
いムードが先行する。多分,真実や本音は出ないだろう。

 だが,日本ではそれでよい。なぜ日本人のインタビュ-は,スピーチと同じように形式的で,おもしろさに欠けるのか・と言われるたびに,私は,“In Japan we expected to be
polite first, to be truthful second."と答える。すると外国人は「これじゃ日本ではヶンカにならないはずだ。聞きたいことを間く外人には住みにくいわけだ」と納得をする。

『上級をめざす英会話』松本道弘著より