スピーキング攻略への道

 

闘いの4部門

 戦略(stralegy)と戦術(taclic)の違いはなにか。 戦術(短期的)とは,戦略(長期的)を助けるための手段と説明してもシンボルが掴めずピンとこない。もし,経営トップが役に立たないX部長を遠いところへ飛ばす(戦略)必要があると判断した時,「君は,もう我が社じゃ必要のない人物。通常ならクビだが,今回は免じてみんながいやがるアラバマの工場へ飛ばす」というような本音を吐けば“芸”を欠く。そこで戦術がいる。

 「君は,かねがね英語ができるということを周囲から聞いていた。ところが,君の技術を生かせる仕事が今までなくて申し訳なく思っていた。ところが,今そのチャンスがようやく回ってきたんだ。周囲もみんな喜んで,この提案に賛成してくれた。工場長に昇格させるから,アラバマにある閉鎖寸前のガン・ホーエ場で3年間頑張ってくれたまえ」

 早くいえば,左遷だが,このように話せば断れない申し出(英語では皿offer one can't refuse)になる。本人はほうり出されたということはわかっていても,世間体を守ることができるので,同僚から親戚から派手な歓送会を受けること必至である。

 出すことがstrategyであれば,diPlomaticallyに相手を持ち上げて納得させるのはtadicである。もし会社が本当にリスクの多い対米進出に賭ける胆なら,それは経営のstrategyであり,そのために1人を派遣することはtacticである。こうなれば,両者のシンボルの違いは明らかである。

 本来,戦術は,見せるものであるが,戦略は,見せないものである。胆は明かさないものである。

 英語をモノにしたい人の中でも胆のない者は,すぐに本音を出し,「同時通訳をやりたいんですが,プロにはなりたくはないのです。英語をマスターしたいのです」と余計なことを口走る。私がもし国際会議運営業者なら,うそでもいいから,同時通訳のプロになりたいのです。そのための犠牲は覚悟です」と胸を張って答える人間を採用する。こう発言するのは,tacticである。拷問をすべて活性化しない限り,同時通訳はおろか,英語をマスターすることもできない。

 英語をモノにするということは,それはもう「戦争」である。

『上級をめざす英会話』松本道弘著より