5年先を見る

 

 私が,英語の読み,書き,聞く,話すという言語の4機能のうち「話す」ことを最も得意とし,最も早く書き上げたかったカパ『「タイム」を読む』というreadingをトップ・゛ツターにspeakingを一番あと回し(7年後)にしたのも戦略思考である。

 戦略は最低5年先を見たものであるべきだというのが私の持論である。

 20代の後半,すでに3日本中で知られる人物になるとハガキを知人に書くとか,いずれNHKのテレビ講座に出てみせると周囲にもらしたりしたものである。「そんなのは心の中にしまっておくものだ」と読者からひんしゅくを買いそうだが,私はこのように目標を人に聞かせ,逃げられないようにして励むことがある。これも恥をかきたくないために,わざと恥ずかしさを捨てることにより,意地をエネルギーとして日標を達成するというstrategyのためのtacticである。

 英語のスピーキングに関しては,人に負けないようになりたいという気持が生まれたのは,高校3年ぐらいの頃だったと思う。

 当時柔道部の部員であった私が, ESSの部長であったI君がアメリカの宣教師と英語をしゃべっているのを聞いてカッコよく感じたことがある。

 とにかく,勝負はspeakingでつける,と心に誓った。当時の私はまだウブであった。

 だが考えてみれば,中学や高校の英語の先生に協力して生徒の意識調査をする時,英語の「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技術のうちどの分野に強くなりたいかという質問をすると,必ず,スピーキングがダンドバこなる。

 かつて私が英語道場のチ一フをしていた時も実用英語に関心を持つ日本人を対象として意識調査をしたが,やはりspeakingに最もウェイトを置く人が次の表を見る如く断然トップであった。

 


現在あなたは英語のどの部分に最も重点を置いていますか。


ソニ一企業が調査した, 1984年7月9日のヤング・ラボラトリー・レポートという報告書(No. 566)によると,ビデオ教材の利用を希望するサラリーマンの中でも、今後とくに伸ばす必要があると思う英語力としてあげているので「外国人との会議(打合わせ)での発言・発表能力」(65%)とトップで,次に「英文資料・文献の速読力」(51%)と「会議やパーティーでのパブリック・スピーすの仕方」(49%)が続いている。

 このように英語のスピーキングの必要性を認め,あるいは英語を話すことに憧れる人は多いが,スピーキングの実力を評価認定してくれる機関が,厳密な意味で,まだない。

 readingやwritingに関しては筆記試験で問に合うが, listeningやspeakingという音声を扱うテストが実施困難なのである。

 そこで,私が唱導している英語道場では,自己認定制を貫き,友の会会員申し込み書の中にも自己測定ランクの欄を設けている。段外者の場合は,英検の2級や1級の合格者が多く,英検2級は英語道ランクで3,4級,英検1級が英語道の1,2級という大ざっぱな基準があるので自己測定は容易だが,有段者以上はそれも困難である。