速話のためのスピード・リスニング

 

 Speech is a joint game between the talker and the listener against the forces of confusion.

 Unless both make the effort, interpersonal communication is quite hopeless.

 スピーチとは,話し手と聞き手の協同作業であることはだれしもが認めるところだが,意外にリスニングの重要性が認識されていない。アメリカにおけるコミュニケーションの過程を分解すると, listening 40%, talking35%, reading 16%, writing 9%,という構成になっているという。なんと,人間か起きている問の時間(waking hours)の75%が言語コミュニケーションに使われているのである。それなのにリスニング教育に対する学校当局側の関心は低い。英語をモノにするという戦略を立てた以上,ネイティヴ英語のシャワーを浴びるリスニング努力を怠るべきではない。前著『英語一何をどう書くか』で,述べた4技能の関連をここで・もう一度シンボルだけを用いておさらいしたい。

 英語はリズムである。英語のリズムは音声から学ぶ。その英語の音感はリスニングから学ぶ。

 ただしこれは理想であって現実的ではない。だから,図のようなピラミッドが要るのである。私のように活字から入った多くの読者にとりリスニング修行は一番つらいけずである。今でもリスニングに悩んでおり,もっと早くから始めるべきだったと思っている。とくに日本では,韓国やフィリピンと違いネイティヴ英語が耳に入る量は限られている。 だから原稿を書く時には, CNNがほぼ一日中聞ける一流ホテルを選ぶのだ。それはリスニングの量が落ち込み,戦略ピラミッドの形を崩さないために自然な英語のリズムを常にインプットしておく必要があるとの判断に基づくものだ。

 だが,ボンヤリ英語をhearしていても英語のリスニングは伸びない。朝から晩までFENをhearしていてもリスニングは向上しない。

 時にはリスンすることだ。リスンとは,「集中」を意味する。

 Are you listening ? といえば,「ちょっと,私の話を聞いているの?」の意味。

 Nobody listens to him. は「彼は浮き上がっている」

「彼は無視されている」。

 He’s the kind of guy who listens. 「彼は腹のある男だ」

 私が最も苦労したのがリスニングだとは,何度も述べたが,意外にリスニングが最も苦手という人にビジネスマンが多い。

 ネイティヴとビジネス・トークをしているはずの本人がそういうのであるから,よほどリスニングは国際舞台で働く日本人ビジネスマンにとってきびしいのであろう。日本のジャーナリストのほとんどは英語が話せないばかりか,聞きとれないといわれている(古森義久『国際報道の読み方』ネスコ)。