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脳の研究を推進させたもの

 

 南イタリアのポンペイが、ベスビオス山の大爆発で一瞬にして廃墟と化したのは、西暦七九年のことである。

 このポンペイの廃墟から掘りだされた薬種商に、地中海でとれるシビレエイを描いてある看板が発見されている。当時の記録に、ひどい頭痛やはげしい陣痛のときに、シビレエイを頭
にまきつけて、失神させて痛みをとりさる治療法がみられるところからおして、この薬種商は、シビレエイの小売りをしていたものと思われる。

 ではなぜ、シビレエイを頭にまきつけると失神するのだろうか。シビレエイには、強力な発電器官があって、触れると自己防衛のために一〇〇ボルト近い電気をたす。脳細胞がこの電
気にうたれると、正常な活動を停止し、その結果、意識を失うのである。いうなれば、電気ショック療法の古代版である。

 しかし、シビレエイが電気をたすことがわかったのは、ずっとおそく十八世紀の中頃である。す九世紀になってから、生物電気の研究が非常に盛んになって、筋肉や神経が働くと、電
気(活動電位)を発生することがわかってきたのであるが、そのきっかけになったのは、イタリアのボロニヤ大学の解剖学者の研究であって、真鍮の鈎でひっかけたカエルの脚の先が、
風にゆれて鉄柵の棒にふれると、脚がピクッと収縮することがヒットになったのは、あまりにも有名なことである。