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キャペンディッシュ論文の魅力的なタイトル

 

 多くの人は、「学術論文では客引きは必要あるまい」と考えるだろう。しかし、事実は逆である。学術論文においてこそ必要なのだ。なぜなら、きわめて多数の論文が発表されているからだ。しかも、読者は多忙な人たちである。彼らに読んでもらうために、「客引き」は不可欠である。

 だから、論文には、アブストラクト(要約)が必すっいている。「読むに値するか否か」を簡単に判断してもらうためだ。しかし、アブストラクトといえども、雑誌の該当ページを開かなげれば読めない。そこで、雑誌の表紙に示されているタイトルで勝負をすることになる(学術雑誌は、表紙に主要論文の目次をのせるのが普通である)。

 アメリカの物理学者クラウスは、学者の仕事を始めてすぐに、タイトルの重要性に気づいた。「宣伝が重要。だから、科学論文には人の気をひくタイトルが必要」と。そして、「これは新発見かと思っていたが、一八世紀のイギリスの物理学者キャペンディッシュがやっていたことだった」と述べている。

 キャベンディッシュは、重力定数gを最初に測定した科学者として有名だ。その結果を王立協会に発表するとき、論文のタイトルをどうつけたか?

 「重力の測定」でもなく、「定数gの値」でもない。キャベンディッシュは、「地球の重さを測る」としたのである。これは、わくわくするような魅力的なタイトルだ。物理学者でなくとも、読みたくなる。少なくとも、結果を知りたいと思うだろう。

長文章法:野口悠紀雄著より