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骨折痕消失

 

 骨は生きているので骨折部の骨代謝による改造は継続し、数年後には骨折の痕跡すらなくなることがある。痕跡消失は小児骨折でとくに早く、完全に消失がみとめられることも多い。骨折痕消失は、皮膚、血管を切って治った状況とおおいに異なる点である。皮膚などを切ると、やがて傷は閉じるが、治ったあと必ず搬痕が残る。この瘢痕=傷あとは、年月がたつとともに薄くなっていくことはあっても、生涯消えることはない。しかし、骨折の傷あとは完全に消えてしまうのである。歳とともに、皮膚の傷あとのような線維のがたまりが体内にだんだんと蓄積していき、臓器の中に線維ばがりが空間を埋めて、ホルモンを分泌する細胞の居場所が少なくなる、そして組織の弾力性も失われていくことなどが老化現象の原因である、といった考え方、がおる。この考え方からすると、体内七骨だけは完全に若返ることのできる組織であるともいえる。もっと極端に考えれば、骨は体液といった海の中で、まわりのカルシウム濃度す圧迫力の影響を受けながら独立して生きている「臓器」である。したがって、若い人の骨でも状況によっては高齢者と同じように弱くなり、高齢者の骨でも若い人の骨と変わらないほど強くなりうる。このことがら体液中の骨は、海の中のサンゴのようであるとも考えられる。骨には、石のような外観をしているが生きている、傷ついても治ってしまう、体液の変化で案外ダメージを受けすすい、といった、海の中でのサンゴとの共通点が多くみられるのである。

 骨折が治る過程を説明したが、細い骨は骨膜細胞・骨芽細胞の量に比べて修復する部分が少なく、治りの早い傾向がみられる。逆に、太い骨は治るのに何週間もかがる。この現象をわかりすすくまとめて、ガールトは骨折の部位の違いによる平均治癒日数を表にしている。しかし私の印象では、この期間は最も短い骨折治癒日数であって、実際にはもう少し長びくこともある。

 頭の骨では、骨折後の治癒に加勢をする軟骨性骨化が生じたいので、骨癒合が遅れることはすでに述べた。その他、骨折したはしとはしがお互いに近づいていて、両方の骨折端を治癒まで静かに保っていられれば、骨芽細胞の作業が少なくてすむので骨癒合が早まる。ここからのことから、骨折後は両骨折端をよい位置に整復して動がないように固定をすることが、骨癒合を促進するのが大切な条件である。さらに可能ならば、手術をしない方が骨膜細胞を温存できるため早く骨折が治る。このように、骨折の修復にはいくっかのマイナスープラスの条件が関与している。