大学教授の収入はパッとしない

 

    キミにツベコペとうるさいことを言う大学教官の収入を開業医の収入と比較してみよう。助手から教授(ここでいう教授は正教授、つまりFull Professorのこと)まで含めた大学教官の平均年収は4万3800ドルである。

   4万5240ドルだったが、別のデータなので細かい数字は違っている。気にしないでもらいたい。いずれにせよ、ナント、大学教官の年収は開業医の年収の4分の1しかない。また、10万ドル以上の年収のある人は大学教官ではわずか3%しかいないのに、開業医では77%もいる。

 全教官でなく、教授にかぎっても、その平均年収は6万5400ドルで、大学院出たての臨床医の初任給よりはるかに少ない。こう書くと、キミは、大学教授をめざすのがバカバカしくなってしまうワゴメン。

 もっともアメリカの大学教授の年収は個人によっても大学によってもさまざまである。

 教授の平均年収をみると、私立大学のハーバード大学は10万7干ドル、スタンフォード大学は10万3干ドルで高額順位の1位と2位である。コーネル大学は8万2手ドル、ロチェスター大学は7万9千ドルだったり、大学によって差がある。

 州立大学でも教授の平均年収はさまざまで、ニュージャージー州立大学の9万1手ドル、カリフォルニア大学バークレイ校の8万フ干ドルが高額順位の1位と2位である。モンタナ大学の5万ドル、ノースダコタ大学の4万8手ドルが低いほうとなる。

 意外と高額に感じるのが学長の年収である。スタンフォード大学の教授の平均年収が10万3干ドルであるといったが、スタンフォード大学学長の年収はその5倍の52万7533ドルである もっとも学長の年収は大学によるバラツキが大きく、ハーバード大学学長は27万8659ドル、コーネル大学学長は29万4687ドルである。それでも教授平均の約3倍はある。

 さらにスター級の教授になると、年収も高額である。有名な医学部教授には年収100万ドルという人もいるという。医学部教授でなくてもノースウエスタン大学の会計学教授は29万4194ドル、カリフォルニアエ科大学のさる物理学教授は19万9045ドルといった高額所得者だそうだ。

 なお、さらに特殊な教授をあげると、フロリダ州立大学のフットボール・コーチのホビー・ボウディン(Bobby Bowden)教授は97万5干ドルの年収がある。ハーバード大学法学部のローレンス・トライブ(Laurence Tribe]教授は大学から16万ドルの年収を得ているのに、コンサルタントをしている企業からは200万ドルももらっているという。

 このように、ごく一部の特殊な大学教授もいるけれど、平均で比べれば大学教官の平均年収が4万3800ドルであるのに対し、開業医の平均年収はその約4倍の17万6千ドルである。収入額から職業をみると、 アメリカでも日本でも、収入の低い基礎研究を選ぶ医学研究科出身者を理解しにくい。

 そうはいったものの、 スゴク頭のいい若者が臨床医になるのは社会としてはもったいない気がする。頭のいい人には、トコトン思考を深めてもらう方が人類社会としては得である。例えば、すばらしいコンピュータ・ソフトを開発してくれれば、人類全体がうるおう。すばらしい都市設計をしてくれれば、多くの住民の生活が快適になる。病気の予防・診断・治療のすばらしい方法を開発してくれれば、人類全体が健康な生活をおくれる。こういう基本になるシステムの設計や研究開発に優秀な頭脳を使っていただきたいと思う。

 ちなみにアメリカ人のケン(Kenneth M。 Yamada:NIHの部長)は外科医の資格をもっているのに基礎研究をやっている。「臨床の世界はまだあいまいなことが多いけど、基礎研究の世界は論理が明解だから、基礎研究を選んだ]、と20年前に言っていた。

『不肖ハクラク』より