実験動物の無益な殺生

 

 大学院生のとき筋肉タンパク質を必要とした折りに、指導教官の指示に従って、生きたウサギを暴れないように押さえつけ、大きな包丁で断頭し、新鮮な筋肉を取り出したこ
とがある。精神的にはかなりのストレスであった。その後、教官として学生を指導する立場になってからは、ウサギに麻酔し成仏してもらっている。

  マウスやラット舳実験で使ってきた。海産動物のウニ、ヒトデは大量に使ったことがある。目に見えないほど小さい大腸菌サルモネラ菌、ゾウリムシも大量に使った、ヒ
トの血液、ブタやウシの血液も多量に使った。

  そういう実験を通して、人々の健康に役立つ科学知識を得ようとした。しかし、人間社会に役に立っていない論文が、一般的にいえば、平均して半分はある。私の論文では
もっと多いかもしれない。となると、このごろは、自分はプラスマイナスでマイナス、つより社会に役立つ以上に「無益な殺生」をしてきたかもしれないと思うこともある。

  20年間化学薬品会社に勤務し、10年前に退社した河野修一郎は、動物実験は「本当に必要なのか?」と問うている。そして、「動物実験に問題あり」と指摘している。
それに対して、東京大学医学部元教授で現在、理化学研究所脳科学総合センター所長の伊藤正男が「バイオ」研究者サイドから反論をしている11)。その内容はおいとくとして
、「バイオ」研究者としてみたとき、研究者である伊藤正男が、自分の意見を表明していてエライと思った アメリカでは当事者が発言するのは当たり前だけど、日本では少な
い。こういう議論が増えれば日本もよくなっていくと感じた。

 そう思ってアメリカ滞在中に『動物福祉団体要覧』という本を調べてみた。すると、アメリカだけで動物福祉団体が141団体もある その1つに「アメリカ動物虐待防止協
会」(American Society for the Protection of Cruelty to Animal)というのがある。本部事務所はニューヨークにある。スタッフは220人、会員は1万5千人もいるという
。どうやらこの協会が世界最大らしい。

 動物福祉団体がアメリカに次いで多い国は英国で97団体あった。そして、ずっと見ていくと、日本には1回もリストされていないことに気がついた。これでは。日本は国際
的に問題視されるわけである。

 そして、さらにしつこく見ていくと、あ、ありました。「日本動物福祉協会」という「日本」という国名を冠した団体がありました。ただし、この団体の本部事務所は英国の
ロンドンにある。ど、どうなっているんでしょう