プロテオグリカンの分子生物学,医学部病理学出身、

 

30代後半男性

神経科学がいいようです

   「やりたいことがあっても、技術がなければ、研究はできません。日本にいたとき、ワタクシは分子生物学を十分学んでいなかったので、研究の視野が狭くなっていまし
た。それで、技術をたくさん習得しようと思ってアメリカに留学しました。ワタクシは、研究では技術が大事だと思っています。技術先行型です」と、少し硬い口諞で話が始ま
った。緊張しているのか、二コリともしない。ときどき眉根をよせて顔をしかめる。

   「先生の研究分野ではどんな研究が現在めざましいでしょうか」と淡々と聞くことにした。

   「現在めざましい研究というのは、もう方法は確立していよすが、1つはトランスジェニックとかシーン・ターゲティングとかいう技術を使った研究です。もう1つは、ヒ
ト疾患の原因遺伝子を見つける研究です。一流誌の『Cell』、「Nature」、『Science』に載るのはこういう研究です。もちろん、重要なタンパク質の遺伝子をクローニン
グするのも重要です。こういう研究がここ数年の動向です。論文はもうかなり出ています」

 「5~6年先とか10年先はどうでしょうかワ」、と聞いてみた。

 「ヒトゲノムプロジェクトが2004年とか2006年に終わります。いよワタクシが申し上げた流れは、ヒトゲノムプロジェクトと同じ流れですから、5~6年先には、重要
なことはもうほとんど終わっていると思います」

 「ご自分の研究テーマを離れて、バイオサイエンス全体を見たとき、どんな研究分野の発展がめざましいと思いますか?」、とお聞きした。

 「神経科学がいいようです 少し前は免疫学もよかったようですが、免疫学はもうピークが過ぎた感じです」

 「分子生物学はどうですか?」、と何となく聞いてみた。

 「分子生物学っていうのは、キットがあって誰でも使える技術です。分子生物学とか、タンパク質化学、細胞生物学とかの枠でモノゴトを考えてはいけません。DNAがどうやっ
て転写され、転写されたタンパク質が細胞の機能をどう担い、細胞の機能がどう疾患に結びつくのか、というとらえ方が必要です。そのため、まずすべての技術と知識がトータ
ルで必要なんです]、とお説教されてしまった。

 「それを1人1人の研究者がやるんですか?」

 「それは好みです。個人の力量にもよるでしょう。ただ、バイオ全体を知らないとやっていけません」

 質問に対して、答がいつもビシバシと返ってくる。