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アメリカに恩を返さない日本の研究者

 

  クラモチさんに本当にお伺いしたいのは、バイオサイエンスについてだけど、参事官殿にとっては、個々のことより大局が大切である。クリントン大統領のお話、日本の科
学技術基本法のお話、科学技術庁が脳研究を推進するお話を伺った。けど、小市民小研究者の、どこか遠い他人事の話を聞いてるような気になってきた。それを現実に引き戻す
ために、「NIHにいる日本人研究者に文句というか、注文というか、希望というか、そういうものがありますか?」、と伺った。

 「研究者には、ノビノビと研究してもらうのが一番いいと思っています。ただ、2年とか3年とかNIHにいて研究をされたら、日本に帰っても、日本の動向をアメリカ側にきち
んと伝える努力をしていただきたい。NIHにいた日本人研究者は学んだことを、ただただ日本にもって帰ってしまう、とアメリカ側の政策担当者は受けとめています アメリカ側
にそう思われるのは、日本としてはいいことではありません。これは日本的な言い方ですが、お世話になったアメリカ人研究者にお返しをしてほしい、ということです。NIHから
日本に帰っても、研究を通して、アメリカの研究者とコミュニケートし⊃づけることが大事じゃないでしょうか。日本の研究者はもっと情報を発信していくことが求められてい
ます。申し上げたいことはそのくらいです」、と言いつつ、メガネの奥のやさしい目が を見つめて、牛うUと光る。「もっとあるかもしれませんが」、とつけ加えて、アッハッハ
ツと笑った。

 「科学全体から見て、バイオサイエンスは、純粋学問的に考えても経済効果を考えても有望な分野です。自分は専門の研究者ではありませんが、生命現象を対象にしていても、
もっと異分野間の交流も必要じゃないでしょうか。例えば、脳研究には、物理の専門家もコンピュータの専門家も加わって、生物医学の研究者と一緒にチームを組んでチャレン
ジしていく、ということでしょうか」、ともおっしゃった。

 帰りがけに、参事官殿は「ちょっと失礼」といって、どこかに電話して、自動車のナンバープレートがどうのこうの、と話している。部屋の戸口においてある“外交官
(diplomat)"と表示してある自動車のナンバープレートを手口「いやー、まだこれに付け替えていないんです」、といいながら、 を日本大使館の玄関まで見送ってくれた。

 「今日はありがとうございました」、と不肖・ハクうク、日本大使館の玄関でクラモチさんに頭を下げた。そのとたんに、大使館入ロロビーにいた黒背広の一行の中にいた中年
男性が、「アリャー、こんなところで」、とクうモテさんに親しげな声をかけた。お会いするのは2年ぶりである。日焼けした腕。元気のいい声研究室のケン・カケフダ博士でもど
こか少し寂しげでもある。女性にもてそうな、やさしいおじさん、ジェントルマンである。

 NIH37号館3E16室で、研究の動向を伺った。

不肖ハクラク著より