聞き手のいろいろ

 

 たしかに,人間をいろいろなタイプの聞き手(listeners)に分類すれば,次のように分かれると,“LISTENING”の著者であるMadelyn Burley-Allen は述べる。くThe Faker (おつきあい型人間≫

 人はだれしもgood listener (聞き上手)だという印象を与えたいもので,理解できなくてもうなずいたり,冗談がわからなくても笑うというおつきあいも,外国人から見るとfakingとなる。とはいえ,聴きとれなかったら,何度も「すみません,もう一度」と尋ねるというみっともないこともできない。会話にも流れ(flow)があり,それが質問により途切れてしまうからだ。くThe Dependent Listener (御説ごもっとも型人間≫

 おやじからChildren should be seen and not heard.(子供は黙っておれ)とかYou'd better listen to everyword I'm saying, young man. (いいか,若いの,耳の穴をほじくって,よく聞くんだぞ)などと言われると,口答えせず,御説ごもっともと聞きっぱなしだけの人間が生まれてくる。彼らのことをthe dependent listeners と呼ぶのであるが,同僚の間でもNo.といえず,常に周囲の意見に追随してしまうという主体性なき人間になってしまう。

くThe Interrupter (さえぎり屋≫

 人の話を最後まで聞かずにさえぎる人は,日本だけではなく,外国にも多い。とくに英語を上手に話す人には饒舌家が多く,英語が上達すればするほど,拍車がかかり,ますますおしゃべりになり,人の話をさえぎる傾向も生まれてくる。英語ペラペラ族のリスクである。この人はいくら速く話せてもせいぜい1級どまり。初段になると,聞き上手にならなくてはならないから,相手の意見をもよく聞くようになる。だが2段以上になれば,敢えて相すの話の腰を折ることがある。いつ必要かーそのタイミングは高段者(一応2段以上をそう呼ぶ)になればわかる。

 たとえば,私がユダヤ人と話し合いをしている最中に,タイミングをみて,急に話題をそらし, By the way,are you Jewish? (ところで,あなたはユダヤ人ですか)と何気なく聞く。 Yes. といえば,間に旻を入れず, HowJewish are you ? と攻撃をかける。Yes.と聞いて黙ってしまったりしてはまずい。

 そこで相手が警戒しながらも,ボソボソとしゃべり始めると,最後まで聞かずに相手のスピーチをさえぎるように, For instance, do you read Talmud?と追う。敵も,「こやつ,ユダヤのことをよく知っておる」と感じるとペラペラしゃべる。

 アメリカのテレビ番組には,日本と違って討論番紐(Cross Fire, Firing Line, Nightline等々)が滅法多いが,多くの場合,相手の発言を封じるようにさえぎる人が多い。お互いに感情のボルテージが高まり,コントロールが利かなくなる(d.フィル・ドナフィー・シ。ウ)場合もあるが,結構それで楽しいものだ。ただこのように相手の言っていることを封じて発言している人で靹意外に相手の発言を聞いている場合が多いから驚く。つまり,相手の発言をさえぎるようにしゃべる場合でもリスンしているのが最大の礼儀である。討論というのは一種のボール・ゲームであるから,ピートすれば議論という球の応酬が速くなるのは当然である。だが,球の動きはしっかりと見ておかねばならない。だから,速く話す人ほど,速く聴ける人だといえる。欧米人の議論はディベートと同じように,惑いタドンを投げ合っているようなものだ。やけどしないように速く投げ返さねばならない。日本人同士の会話は雪合戦で,小さい雪の球の応酬だから,少しウーアーと間をとると溶けてしまう。

 日本人同士でボソボソしゃべっていても,リスニングは伸びず,アメリカのテレビ番組のスピードにはとうていついていけないということを教えるために,よく用いる比喩だ。聴きながらしゃべる力がない限り,アメリカのテレビ番組には出ない方がよい。とすればやはり最低は英語道2段ぐらいの力が要る。段外者のdestructive interrupterから有段者のcreative interrupter を目指すべきである。

 この域を目指す人は段外者の頃から,ネイティヴの英語のリスニング量を増やしておくことだ。

 先に述べたガイジンハントからスピーキングの練習だけを学ぶ人は段外者どまり,リスニングのために外人八ントする人は,有段者になれる。自分のスピーキングのためだけなら,日本人同士で充分である。さて,リスニングにより神経を集中させる外人ハントから何が学べるだろうか。

 “You see. Our president Reagan has a hearing problem. But he's got no listening problem. But it looks as though you ESS people have a listening problem.”

 “Oh, I'm sorry. We have no hearing problem.”

 “Don't be so sorry. You meant to say you have a listening problem. Don't worry. That's the common mistake Japanese learners of English make. Anyway, why are you asking ME?”

 “Because you're a foreigner.”

 “Don't gaijin me.”

 以上の会話は, 2, 3級の英語の使いすがネイティヴに話しかけた場合通常どのようなことになるかと想像しながら少しオーバー気味にシミュレーションしたものである。

 2,3級は,これで「ガイジンと話ができた」と自信をつけて帰途につくだろう。「オレの英語はけっこう通じるのだ」と考えている間,その人は永遠に同じ間違いを犯し続け,有段者になれない。有段者を意識する人は,訂正された個所をしっかり覚えている。ウェイトをリスニングに置いているからである。