細胞体と樹状突起

 


 普通、数す本の突起がでており、そのうちの一本は軸索といい、普通、長くのびていて、神経線維の芯になっている。ほかの突起は樹状突起という。

 細胞体は、一般の細胞と同じように、核とそれをとりまく細胞質からできている。核は、細胞の生活の中心であり、また、遺伝物質を担っている染色質にとんでいる。中心に核仁があ
る。

 ネフロンの細胞体には、ほかの細胞と同じように、物質代謝に重要な役割をしている糸粒体 (ミトコンドリア)という小さい粒すや、ゴルジ体という網状の構造物が、核のまわりにた
くさんある。そのほかに、ほかの細胞にないもので、ニッスル小体という粒すが。軸索と軸索小丘(細胞体から軸索がでる場所)以外の細胞体や樹状突起のなかに分散している。これは
酸をめった蛋白質からできていて、細胞質を作る蛋白質の合成に重要な役割をしている。二ッスル小体は、過度の疲労、老年、中毒などでこわれてすくなくなるし、また、神経線維が切
断されると、とけてみえなくなる。

 樹状突起は、樹の枝のようにのびて枝わかれをしている。その数十ひろがり方はさまざまであって、小脳皮質にあるプルキンエ細胞のものは実に見事である。なお、樹状突起の表面に
は、バラの棘のような小さい突起がたくさんある。シナプスの場所と考えられている。申経線  神経線維は、細胞体からのびた軸索が芯になってできている。軸索は、ほとんど裸のま
まのものもあるが(無髄線維)、たいていは、ビニ、ル被覆した電線のように髄鞘で包まれている(有髄線維)。髄鞘は、蛋白質性の枠組みの間を、ミェリッというリポイド(類脂質)
でみたされている。髄鞘にはフフンヴィエの絞輪というくびれがところどころにある。

 髄鞘は、軸索が太いものほど厚くなっており、神経線維の直径は、髄鞘をふくめて、太いものでは二〇ミクロン以上もあり、細いものは一ミクロン以下である。 なお、髄鞘は胎児期
の後半から、出生後にかけて次第にできてゆくが、でき方は場所によって、はやい遅いがある。基本的生命活動を営むために必要な働きをする脳幹や小脳は、はやくできあがる。また、
大脳皮質でも、場所によって髄鞘化の時期が違う。

      髄鞘の外を、シュワン鞘という薄い膜が包んでいる。神経線維の物質代謝に関係しており、脳中脊髄のなかの神経線維にはない。あとで述べるが、グリア細胞がこの働きを
代行しているのである。

 神経線維の長さは、一回以上に及ぶものから、数十ミクロンしかないものまで、長短さまざまである。大脳皮質から腰髄まで下行しているもの、腰髄から足の先の筋肉へのびているも
のは、長い線維の代表である。シナプス 神経線維は、途中で枝分れして側枝をだすこともあり、また、末端近くで複雑に枝分れしているものもある。その末端は、ぽかのネフロンとシ
ナプスしている。脳や脊髄からでる神経線維の末端は、感覚細胞、筋肉細胞、腺細胞と連接しているべこれも一種のシナプスである。

 シナプスのところでは、普通、神経線維の末端がふくらんで(終末ボタン)、別のネフロンの細胞体中楔状突起に接着している。細胞体や樹状突起には、たくさんのシナプスがあり、
細胞体は終末ボタンで、ほとんどおおわれていることさえある。ちなみに。ショルによると、大脳皮質にある一つのネフロンの細胞体と樹状突起には、八千個以上のシナプスがあるとい
う。なお、大脳皮質の終末ボタンは小型である。          

 電子顕微鏡によってシナプスの微細構造がわかってきた。神経線維の末端(シナプス前部)と細胞体または樹状突起の部分は、非常にせまい間隙をへだてて接しており、シナプス前部の
なかには、ミトコンドリアシナプス小胞という小さい粒すが集っている。これらは、シナプスにおける信号のうけわたしに必要な物質を作っていると考えられている。
 グレイは、シナプスに二つの型があるという。一つは、細胞体や樹状突起の幹にあるもので、シナプス間隙は二〇〇Å、もう一つは、樹状突起の幹と棘にあるもので、やや大型で、間
隙は三〇〇Åという。この違いは、働き方の違いを示唆しているようである。

 シナプスは、軸索の末端と細胞体、あるいは軸索の末端と樹状突起との間で作られているが、近年、樹状突起同士がシナプスを作っているという考えが「部の解剖学者によってだされ
ている。グリア細胞 人間の大脳皮質で、神経細胞が占める容積は非常にわずかで(二・八五%)、大部分は、血管と神経線維とグリア細胞である。なかでも、グリア細胞の占める容積
はかなり大きい。グリア細胞は、あたかも、散在している神経細胞のすきまをみたして、支えをしているようにみえる。

 グリア細胞には、星状グリア、‐稀突起グリア、ホグリアの三種類がある。

 星状グリアは比較的大きく、数本から二十本の細い糸状の突起がでている。稀突起グリアは、直径一〇ミクロン位で、突起は二十四本である。ホグリアは、もっと小型である。なお、
グリアは、ゆっくりではあるが、拍動したり伸縮しているらしい。

 三種類のグリアは、核や細胞体の微細構造がそれぞれ違っているので、その働きも違うと考えられている。

 星状グリアは、毛細血管に突起をだし、別の突起は神経細胞をとりまいている。実際に、脳の毛細血管の周囲は、すっかりグリア細胞でとりまかれている。神経細胞の物質代謝に重要
な役割をしていることが容易に想像されるが、実はこれが22で述べる血液、脳関門の実体である。

 稀突起グリアは、主に、神経線維のシュワン鞘の代りに髄鞘をとりまいている。髄鞘の形成と維持に関係している。

 なお、神経細胞はこわれても、決して再生しない。これに対して、グリアには増殖する能力があるから、神経細胞のこわれたあとは、グリアの増殖によって穴うめされる。