2014-08-16から1日間の記事一覧

真の悪文は羊の皮をかぶっている

「わかりにくい文章」を書かねばならないのは、責任やコミットメントを回避したいからだ。しかし、こうした場合に複文すカタカナ用語を多用すると、すぐに批判の対象となる。「わかりにくい文章にしたい」という意図が、みえみえになってしまうからだ。だか…

悪文の代表選手(その2)逃げ水説明文

パソコンやそのソフトの使い方の説明にも、わかりにくいものが多い。 最大の理由は、文中に現れる専門用語の意味が定義されていなかったり、説明されていないことだ。 フォルダ、ショートカット、ロダオン・プロセス、ローカル・バス、ファイル転送プロトコ…

悪文の代表選手(そのI)「三読不可解」文

税法の条文の多くは、主語と述語の対応関係がすぐに読み取れない構造の複文にたっている。非常に読みにくい。「一読難解、二読誤解、三読不可解」と言われるゆえんだ。例えば、つぎの文章を見よ。 法人税法、第三五条の二 内国法人が、各事業年度においてそ…

わかりにくい文章の書き方

正確であり、しかもわかりにくい文章 この節の表題は、誤植ではない。わかりにくい文章を書かねばならぬ場合も、この世には存在する。言い訳をしたい場合、責任回避をしたい場合、あるいは、将来の方向づけに関して明確なコミットメントをしたくない場合など…

論理関係を正確に

わかりやすい文章を書く大前提は、ます何よりも、著者自身が内容をよく理解していることである。これは、当然のことだ。しかし、実際には、そうでもない。学生の論文では、つぎのような問題が頻繁に生じる。 (1)問題が何であるかを適切に捉えていない。 …

選択して集中せよ

一般に、「あれもこれも」と網羅しようとすると、論旨も主張もはっきりしなくなる。重要なものが何かを見出し、それに集中すべきである。これは文章に限ったことでぱないが、文章執筆ではとくに重要なことだ。 「これ以外の場合もあることを忘れている」「最…

口頭伝達ではもっと難しい

文章なら読み返すことができる。しかし、口頭伝達では、それができない。このため、聞き手は全体の構造を把握できないことが多い。 対話の場合には、聞き手はわからないところで質問できる。しかし、講義や講演では、質問しづらい。したがって話し手としては…

「わかりにくさ」の一般理論

部分と全体の関係がはっきりしない 私は、学位請求論文す課題論文、懸賞応募論文などを読む機会が多い。これらの多くは、「じつにわかりにくい文章」なので、直すことが頻繁にある。だから、「わかりにくい文章がなぜわかりにくいか」「それをどう直せばよい…

箇条書きで示す

並列する内容であることを示すには、箇条書きにするのが一番わかりすすい。例えば、「この原因としては四つのものがある」ということを示すには、四項目の箇条書きにする。 もっとも、文学的志向の強い人は、こうした書き方を嫌う。無味乾燥で実務的すぎると…

文章のまとまり相互間の関係

結論と理由の順序 2で述べたのは、個々の文をどのように続けたらよいかという問題だ。類似の問題は、文の言とまり相互間においても発生する。 しばしば問題となるのは、結論が先か、理由が先かである。 数学の場合には、定型的な書き方がある。主張を「定理…

文と文の関係を接続詞で示す

文と文との論理的な関係は、つぎのような接続詞を用いて、明瞭に示すべきだ。 ◆論理を進める場合-したがって、だから、このため、それゆえ、ゆえに、かかるがゆえに、結局。 ◆根拠を示す場合-なぜなら、その理由は、というのは。 ◆論理を反転する場合-しか…

言語明瞭、意味不明瞭

個々の文の意味はわかるのだが、文と文がどのような論理関係でつながっているのか、がわからない場合も多い。 突然別の話題が出て来て、前の記述とどうつながっているのかわからない。いくら読み進んでも、何を主張したいのか、がわからない。読み進むほどに…

修飾語と被修飾語の関係がはっきりしない

文章が読みにくくなる原因は、主語述語の関連問題以外にもある。しばしば生じる問題は、修飾語の対象が捉えにくいことだ。これも、複文の場合によく起こる問題だ。ただし、複文でなくとも起こる。 つぎの表現は、八つの異なる意味に解釈できる。 「黒い目の…

主述泣き別れシンドローム

つぎの文を読んでいただきたし。 (I)私の友人が昨年大変苫労して書いた本は、パソコンが普及し始めた頃には、異なるアプリケーションソフトが共通のOSで動くようになっていなかったため、データを交換することができす、非常に不便だったと述べている。…

学術論文での引用

学術論文においては、以上で述べたのとはまた別の意味で、引用が不可欠と考えられている。それは、論文の内容が思いつきす独り善がりでないことを示すことだ。これが、引用の第三の機能である。 この意味での引用は、単なる「飾り」以上のものだ。すべての学…

レトリックの重要性

まず何より、こうしたテクニックの重要性をつねに意識すべきだ。もちろん、意識したからといって、すぐにうまくなるわけではない。ただし、文章を読む際にいつもこのことを意識していれば、次第にうまくなってゆくだろう。意識するかしないかは、長期的には…

なぜ終わりが大切か?

終わりが重要な理由は、二つある。 第一に、「読むに値する文章かどうか」を判断するのに、最初を見るだげでなく、結論を読七人もいるからだ。それどころか、最初は飛ばして終わりから読む人もいる。岸信介元首相は、書類を後ろから読んだそうである。しつけ…

キャペンディッシュ論文の魅力的なタイトル

多くの人は、「学術論文では客引きは必要あるまい」と考えるだろう。しかし、事実は逆である。学術論文においてこそ必要なのだ。なぜなら、きわめて多数の論文が発表されているからだ。しかも、読者は多忙な人たちである。彼らに読んでもらうために、「客引…

序論・本論・結論の三部構成で

文章の構成について、昔から「起承転結」ということ、が言われてきた。しかし、これはもともとは漢詩の形式である。現在では、文学的エッセイで用いられる形式だ。論述文の場合は、これに従う必要はない。むしろ、「転」のところで別の話題が現れると(ある…

全体は三部で構成する

第2章で述べた「骨組み」は、内容面のものである。すでに述べたように、この意味での骨組みは、通常は隠されていて、外からは見えない。 外から見えるのは、形式的な構成だ。これに関して通常論議されているのは、「起承転結か三部構成か」という問題だ。こ…

話す場合も長さを意識しよう

以上で述べたのは文章の場合である、が、話す場合も、「長さ」(与えられた時間)を意識する必要がある。 論文審査のとき、「最初に五分で要旨を述べよ」と注意したにもかかわらす、延々と話す学生が多い。一五分たっても、序論しか話していない。このような…

長文-一万五〇〇〇字

「一万五〇〇〇字」は、一行四〇字で三〇〇~四〇〇行程度、四〇〇字詰めの原稿用紙では、三〇~四〇枚である。 これは、本格的な論文や報告書の長さだ。あるメッセージをさまざまな観点から述べられる。問題点の指摘だけでは不十分で、答えを書く必要、があ…

短文-一五〇〇字

二五〇〇字」は、一行四〇字で三〇~四〇行程度、四〇〇字詰めの原稿用紙でいえば、三~四枚である。ワープロで書いた文章を標準的な設定でプリソトアウトすると、A4一枚がほぼこの長さになる。 通常は、この長さの文章を「短文」という。新聞の論説や、雑…

文章には「短文」と「長文」しかない

形式面でまず重要なのは、「長さ」(文字数)である。 「何、が言えるか」は、与えられた字数に依存する。長さが内容を規定するのであり、内容が長さを決めるのではない。したがって、「どれだけの字数を使うことができるか」を、つねに意識している必要、が…

 なぜ「得意科目」でやらないのか?

会社の経営者で、会社の経営と無関係な世界情勢や、抽象的な経済理論のことを書く人がいる。 もちろん、それもいいのだが、なぜ経営の実体験に基づいたことを書かないのだろう?「日本人は農耕民族だから、アングロサクソン流の経済制度は合わない」とか「市…

私がエ-ル大学で勉強していたとき大切にしていたのは、コーヒーメーカーが置いてある小さな部屋での雑談だった。大学院生や若いスタッフが、この部屋にふらっと立ちよる。そこで「どんなテーマがいま流行っているか」という類の話が出る。これは、教室の講…

血液-脳関門

メスレンブル、のような色素を動物に注射すると、脳膜や血管の内壁は色素でそまるが、脳の実質(神経細胞やグリア細胞)はまったくそまらない。このように、脳の血管にはいった物質は、すべて脳の実質にはいるというわけではなく、血液から脳にはいるには。…

脳を支える物質代謝

私たちの身体のなかで、脳ほどぜいたく三昧をしている器官はない。しかし、その構造の複雑さ、働きの微妙さ、役割の重要さを考えると、無理もないことである。 そこで、ます、そのぜいたくさを証明するデータを示そう。脳を流れる血液の量は。一分間で、これ…

行動を操る脳

ロシアの新進の生理学者パブロフが、ノーベル賞受賞の対象になった消化腺の活動を研究していたときのことである。 唾液腺の導管を頬の皮膚にぬいつけ、唾液の分泌が滴数ではかれるようにしたイヌが、いつも餌を貰っている小使の靴の音が近づくと、あたかも餌…

新皮質と大脳辺縁系が、それぞれ別の賦活系によって、その活動水準が統御されていることがわかったが、この二つの賦活系は、決してお互いに独立であるはずはない。新皮質で形成される高等な精神活動と、大脳辺縁系で営まれる基本的な心の動きとは、お互いに…