読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

調節の仕組み


        一挙手一投足というが、どんな簡単な運動、動作でも、その根底には、複雑微調節の仕組み 妙な自動制御による調節の仕祖みがたえず働いている。この揚合、フィー
ドバックされる情報のうちで、一番重要なものは、筋紡錘からでるイングルスである。この調節は、脊髄でも行なわれているが、自動制御の元締めは小脳(新小脳)であって、次のよう
な仕組みで行なわれている。意図された運動の設計書は、運動野にもわたされるが、同時に、大脳皮質から橋を通って、小脳へはいる神経路によって小脳へ送りとどけられる。一方、実
際におこった運動の情報は、筋紡錘からでるイングルスによって、脊髄を上行して小脳へ送られる。小脳は、送りこまれた運動の情報と運動の設計書とを照しあわ
せ、心しくいちがいを発見すると、直ちに補正のイングルスを送りだす。その一つのルートは、視床や大脳核を通って、大脳皮質の運動の領域へゆく経路で、これによって、運動野から
送りだされるインプルスが補正される。もう一つのルートは、網様体へはいる経路で、ここで、下行路のシナプスにより直接的に働きかけて補正を行なっている。

 このように、二段構え、三段構えの調節の仕組みで、私たちの運動、動作の正確さ敏捷さが保証されているわけであって、小脳が演する役割はきわめて大きい。従って、もし小脳に障
害がおこると、意図した運動が思い通りにできなくなる(ふ脳性運動失調)。敏捷に運動する鳥類運動系と感覚系の閉回路(J. Paillard)の脳がよく発達している理由も、ここに
あるわけである。

 小脳はまた、前庭器と連絡して、姿勢の調節にも関係している。この働きを分担しているのは、古小脳である。

 普通、運動系と感覚系は、それぞれ独立の系統として区別している。しかし、さきに述べたことでわかるように、運動系は、感覚系の協力があってはじめて、その働きを合目的的、能
率的に実現することができるのである。つまり、二つの系統は、図45に示すように、非常に複雑な閉回路を作っているのであって、すでに一八二六年に、ペルが、運動には筋肉からの感
覚が絶対に必要であると述べ、脳と筋肉との間の閉回路を「神経の環」という言葉でいみじくも表現している。