箇条書きで示す

 

 並列する内容であることを示すには、箇条書きにするのが一番わかりすすい。例えば、「この原因としては四つのものがある」ということを示すには、四項目の箇条書きにする。 もっとも、文学的志向の強い人は、こうした書き方を嫌う。無味乾燥で実務的すぎるというわけだ。たしかに、箇条書きの連続では、そうした印象を与えかねない。このような読者を相すにするときは、「第一は、第二は」として文章に埋め込むほうがよい。この書き方で問題となるのは、並列が終わる箇所の示し方だ。改行すればわかる場合が多いが、わかりにくい場合には、次ページに示す口記号を使うことも考えられる。

 昔の法律の本には、第一巻第一部第一編第一章第一節第一款第一項というような書き方のものが多かった。ドイツ人はいまでも論文の場合にこうした書き方をする。たぶん、これを真似たものなのだろう。たしかに論述のレベルを示すにはよい。しかし、鎖でぐるぐる巻かれたような気持ちになって、息苦しい。

 どうすればよいか?(その3)脱線や注記は明示する

 注、付言、付記などの脱線は、脚注にするのが一番よい。こうしたものが本文中に混在していると、全体としての論理の流れや主張点が見えにくくなる。

 脱線部分が短ければ、( )で括って本文中においてもよい。私は、しばしばこの方法を用いる。ただし、エッセイのような文章の場合には、嫌われる。

 そこで、最低限、わき道にそれることを、接続詞で示すべきだ。この目的のために使いうる接続詞としては、「ところで」「なお」などがある。「話題がそれるが」「本題とは別のことだが」「この機会に付言すれば」「余談だが」などによって示すこともできる。

 難しいのは、この部分が終わったことをどう示すかだ。戻るところで「主題に戻れば」と示すのが、最も直接的な方法である。

 数学の教科書でぱ、定理の証明が終おったところを口という記号で示し、つぎに続く本文と区別する(昔は、「証明終わり」を示すのにQEDと書いたが、口のほうがスマートだ)。通常の文章ではあまり見かけない記号だが、論理的な内容の文章の場合には、切れ目をはっきりさせるために使ってもよいだろう。本書では、コラムの末尾に用いた。これは、コラムが終了したこと(次ページに続いてはいないこと)を明確にするためである。

 なお、参考文献す引用元を示す場合、本文中に埋め込むと読みにくくなる。これらは、脚注にするか、あるいは、本書で行なっているように、Iマークを用いて節あるいは小節の後に示すのがよい。本格的な論文では、巻末に参考文献目録をおき、本文中では、野口(二〇〇二)のように示す(数字は、文献の刊行年)。

長文章法:野口悠紀雄著より