NIHのカラオケ大会

 

 「私はソーシャルワーカーですよJ


 NH30号館4階の図書室で友人を待っていたら、初対面の野水基義さんが話しかけてきた。小太りで二コニコした気のよさそうな人である。あごのあたりに少し無精ヒゲをは
やしている。

 「NIHにいる日本人研究者の一番大きな団体はゴルフクラブですけど、「漁業組合」もいいですよ。年1回、2泊3日で釣りに出かけるんです。昨年はすごかったですよ。ちょ、
ちょっと待っててください」、といって野水さんは写真を持ってきた。

 「このヒラメ、すごいでしょう。54~55 cmはありましたよ。これは一番デ力かったんですけど。1人当たりヒラメを10匹ぐらい釣りましたね。クロッカーなんか入れ食いで
すよ30 cmぐらいのが、1人100匹以上釣れましたね」

 「クロッカーって、日本語ではなんていう魚」

 「ウーン、日本語は知らないけど、ジャイアントっていう近所のスーパーマーケットで売ってますよ。一番安い魚ですよ30 cmぐらいで、刺身にするとアジのタタキみたいでお
いしいんです。少し魚臭いんだけど」

 「あー、こっちの写真。これは釣れない年でした。雨が降って寒くて、レストランでメシ食って帰ってきましたよ。写真のこの人、『NIHのマドンナ』って呼んでたけど、な
んていう名前だったかナー」。写真にはニッコリと微笑んだ若い美しい女性が写っている

 「それに“JALカラオケ大会"があるんですよ。大使館チーム、プレスチーム、ファイナンスチーム、商工会チームとか8チームぐらいあって、ワシントンDCに住んでいる日本人
が700人ぐらい集まるんです。昨年は、司会を長野智子さん(アナウンサー・在ニューヨーク)に頼んで来てもらったんですよ。なんとウチのカミさんが優勝したんですけどね」

 前置きが長くなってしまった。京都大学薬学系大学院・キリンビール・NIH国立癌研究所- NIH国立歯・顔面研究所と移籍し、そして、あと2週間でカナダ・モントリオール
のバイオテクノロジー研究所に主任研究員として移籍するという野水基義さんに研究の動向を伺った。

不肖ハクラク著より