BCL中年

 

 このほかにもオーストラリア放送、ニュージーランド放送、カナダ国際放送、それに短波ファンの人気の的、オランダ放送なども良好に受信できる。オーストラリアに長期出張、あるいは留学予定の方には、ラジオ・オーストラリアが貴重な情報源となり、出発前にオーストラリアなまりになれることもできる。「出張での成功の鍵はBCLにあり」といえば、いささか大げさにすぎるだろうか。

 BCLとはゐroadcast /istenerの略で「放送聴取者」の意味。 1970年代から80年代にかけて、日本ではBCLブームがまきおこった。高性能のBCLラジオが次々に発売され、全国の「BCL少年」が群をなして外国の放送局に受信報告を送ったのもこの時期であった。

 現在では一時のブームは去ったものの、語学に関心をもつ人にとってBCLの価値ははかりしれないほど大きい。英語にかぎらず、世界の言語を直接耳にして確かめることができるからだ。お望みならば、パプアニューギュアのピジン英語、南アフリカアフリカーンス語やスイスの少数言語、ロマンシュ語までテープに残すことができる。ラジオ1つで世界が飛躍的に広まるBCLを無視する于は決してない。 私がはじ;めてロンドンに滞在したとき、最初に求めたのは、旧西ドイツ、グルンディッ匕社製の短波ラジオであった。待つももどかしくスイッチを入れると、日本では受信不可能な幻の電波が入ってくる! モナコモンテカルロ放送、長波で送られるヨーロッパN(d、オランダの沖合いに浮かぶ船舶から流される海賊放送のラジオ・キャロラインなど。「BCL中年」であった私の睡眠時間は激減してしまう。

 しかし、オランダ、フランス、スイスをはじめほとんどの主要局はすでに日本でおなじみだ。遥かかなたから海を渡って入感するラジオ・オーストラリア、それにNHKの国際放送、ラジオ・ジャパンなどは異国での孤独な心をなぐさめてくれる。私がBCLの真価を再認識したことはいうまでもない。

 ただ、音に敏感な人のなかには、ノイズの多いラジオ放送を語学の教材として敬遠する傾向があるようだ。CDやステレオ放送になれた若い世代はことさらその傾向が強い。がしかし、ラジオ放送こそ語学教材として最適ではないかと私は思う。雑音が入るのは欠点との見方には一理ありそうだが、むしろそれを長所と考えてみる。実際の言語活動はLL教室のなかのように理想の条件のもとで音を聞くというよりも、ノイズのなかから音を拾いあげることにあるのだから。

 といいきかせて、現在でも私は毎日、電波の海外旅行に出るように心がけている。ご参考までに「2時間の電波の旅」の周波数をまとめておこう。

 海外放送を少し聞きなれると、音質によってどの国から送られているかがわかるようになってくるし、英語のお国なまりも知らぬうちに身についてくる。ある期間、短波の英語を集中して徹底的に聞いてみよう。熱心なリスナーは、無意識のうちにVOAやBBC風の本格的なアクセントが囗をついて出てくるのに気づかれるはずだ。

 なお、受信状態は日と時間帯によってかなりの差があり、周波数は年に数回変更されることがあるので注意したい。随時、放送局に受信報告を送ると、最新のスケジューフレが送られてくるので好都合である。

『英語表現を磨く』豊田昌倫著より