群集欲の仕組み

最後に、群集欲であるが、飲、食の行動や性行動をより能率的に営むために、欠くことのできない欲求の心である。動物はもちろんのこと、私たち人間も、家庭、団体、社会 、国家、民族といったように、形式や規模は違うが、お互いに相寄り集って集団生活をして…

視床下部の内側部に電極をいれて剌激

次に、視床下部の内側部に電極をいれて剌激してみると、こんどは全く餌をたべなくなる。 そこで彼らは、内側部を、満腹を感する中枢と考え、外側部を空腹を感する中枢と考え、この二つを総括して、摂食中枢とよんだ。 イヌやネコやサルでも、同じ現象がおこ…

本能をうみだす脳

どんな高僧、聖人、碩学といえども、これだけはどうすることもできない。 私たちの頭のだかに、おのずとわいてくる生物的欲求の心---この心なくては、私たちはこの世に生をつなぐことができない。なぜなら、それは、個体維持と種族保存の営みを、た くま…

精神薬理学

脳の研究が、脳波の導入と応用によって非常に推進されたことは、すで述べたところであるが、大脳辺縁系の研究の発展に対する脳波の貢献もまだきわめて大きい。 ところで、旧皮質率古皮質は、同じように大脳皮質とよばれているが、新皮質との間に、細胞構築学…

大脳辺縁系

嵐も吹けば雨も降る、陸上の変転きわまりない環境のなかで、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、たくましく生活を営むために発達しだのが、陸上の脊椎動物の前脳である。 ところで、基本的生命活動である個体維持と種族保存の営みは、水中生活では、主に味覚がその…

利き手

字をかいたり、箸をもったり、相手をなぐったりするような、片手でできる動作に普通、私たちはどちらか一方の手をきめて使う。敏捷に、しかも正確に動かすことができ(器用さ)、 そのうえ、力もよくはいるためであって、これを利き手という。 人間では、右…

利き手、利き脳

私たちは、左右の手を自由に使いわけることができるし、皮膚の感覚も、左右を感じわけている。身体の左右の筋肉や皮膚の感覚を司る運動野辛感覚野が、左右の大脳半球にふりわけ られているためである。 しかも不思議なことに、脳と身体で、支配関係が逆にな…

情動的な言葉

以上述べた言語野は新皮質にあるから、当然、知的な言葉の座と考えられる。 すると、情動的な言葉の座はとこにあるのだろうか。大脳辺縁系の皮質部分や、それと関係をもった脳幹 の部位を刺激すると、発声がおこることが動物実験でたしかめられているから、…

言葉をしゃべる脳

イヌやネコでも、いくつかの鳴き声をなきかけている。別府近郊の高崎山のサルの叫び声には32種類に区別できるという。 しかし、動物の声は、鳴き声、叫び声であって、私たち人間が話す言葉ではない。 ダーウィンの進化論を推進したへッケルは、進化の段階…

知り、喜び、意欲する脳

漱石の「草枕」の冒頭に 智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。という文句がある。私たち人間の高等な精神活動である知、情、意を、心にくいま でいいあらわして申し分がない。 ここで、知とは知覚、認…

調節の仕組み

一挙手一投足というが、どんな簡単な運動、動作でも、その根底には、複雑微調節の仕組み 妙な自動制御による調節の仕祖みがたえず働いている。この揚合、フィー ドバックされる情報のうちで、一番重要なものは、筋紡錘からでるイングルスである。この調節は…

姿勢と運動を作る脳

重力の場で生を営行人間の基本条件-それは、低姿勢であろうが高姿勢であろうが、とにかく姿勢を正すことである。 ほとんど意識していないが、私たちの姿勢は、たくさんの筋肉のたゆみなき緊張によって支えられているのである。 しかし、生をたくましく推進…

感覚する脳

目でみる、耳できく、舌で味わうという。しかし実際に感じているのは、脳の感覚野である。 また、草むらにすだく虫の音をきく、天空にまたたく星をみる、ともいう。このように、外界に、物の存在を感じるこの性質を、感覚の投射という。 ところで、感覚野の…

大脳皮質の分業体制

局所麻酔で脳の手術をうけている患者さんの、大脳皮質の中心溝の前のあたりに電極をあてて電流を通じてみる。すると、拇指がピク″と動く。刺激する場所をすこし下にすらすと、 こんどは顔の筋肉がひきつる。 刺激電極を中心溝のうしろに移すと、手の甲に触ら…

脳定位固定装置

脳のなかの旧皮質、古皮質やいろいろな核に電極をいれて、電気刺激をしたり、脳波を記録したり、あるいは化学物質を注入したり、破壊したりするために考案されたのが、脳定位固 定装置である。いわば、化学実験における天秤、組織学研究における顕微鏡のよう…

臨床脳波

脳の働きに異常がおこると、それに対応して、異常な脳波パタンが現われてくる。 これを手掛りにして、病気の診断や治療の目的に活用するのを、臨床脳波という。 異常な脳波パタンの主なものは、 一 a波のサイクルや振幅の減少 二 左右の対称点における脳波…

脳波の発見

筋肉も神経線維も電気を発生するなら、脳細胞も活動すれば、活動電位をだすに違いない。そう考えて、実験をはじめたのが、イギリスの生理学者ケイトンである。 ケイトンは、 ウサギの脳を露出して、その表面に電極をあて、これを鋭敏な電流計につないでみた…

脳の研究を推進させたもの

南イタリアのポンペイが、ベスビオス山の大爆発で一瞬にして廃墟と化したのは、西暦七九年のことである。 このポンペイの廃墟から掘りだされた薬種商に、地中海でとれるシビレエイを描いてある看板が発見されている。当時の記録に、ひどい頭痛やはげしい陣痛…

興奮と抑制

興奮という言葉をきくと、とかく、いらだった神経、おちつかない心、いきりたった姿を想像しがちである。しかし、ここでいう興奮は、もっとおちついた学問的用語である。 たとえば、筋肉細胞が収縮するとか、感覚細胞か刺激をうけいれるとかいったように、私…

細胞体と樹状突起

普通、数す本の突起がでており、そのうちの一本は軸索といい、普通、長くのびていて、神経線維の芯になっている。ほかの突起は樹状突起という。 細胞体は、一般の細胞と同じように、核とそれをとりまく細胞質からできている。核は、細胞の生活の中心であり、…

ネフロン

私たちの身体で、天文学的数字を求めるとすれば、身体全体を組立てている細胞の数であろう。約三十兆といわれている。 ‘ それに比べると、脳を組立てている細胞の数は、足もとによれない。それでも、精神の座、大脳皮質にある一四〇億の神経細胞は、世界の人…

脊髄

脊髄の両側面から、三十一対の脊髄神経(頸神経八対、胸神経十二対、腰神経五対、仙骨神経五対、尾骨神経一対)がでており、これに対応して、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄に区分され ている。頸髄の下方部と腰髄が太くなっているが、手と足にたくさんの神経線維を…

小脳

小脳は、橋と延髄の上にあって、大部分は大脳半球の後頭葉でおおわれている。中央がくびれた長円体で、くびれた部分を虫部、左右のふくれた部分を小脳半球という。表面には、横 に走る溝がたくさんある。 縦に切ってみると、中心部にある白色の髄質が、樹枝…

大脳皮質の微細構造

大脳皮質をうすく切って染色してみると、形、大きさの違う神経細胞が層をつくっている。これを細胞構築という。 標準型の細胞構築を模型的に示したもので、右端から二番目は、神経細胞だけを染めだしたもの、右端は神経線維だけを染めだしたものである。次の…

脳の構造

私たちの身体のうちで、脳ほど傷つかないように厳重に保護されているものはない。三重の脳膜(硬膜、クモ膜、柔膜)で包まれている。柔膜は、脳の表面にぴったりくっつき、その 外側のクモ膜との隙間は、髄液で満たされていて、外からの衝撃が脳へ強くひびか…

脳の発達

生れたばかりの赤ん坊は、頭でっかちで四頭身。しかし、みるみるうちにスマ、トになって八頭身といけば理想的であるが、私たち日本人では、せいぜい六・五頭身から七・五頭身と いったところである。 ということは、人間の脳は、胎児のうちに、身体のぽかの…

中央集権の神経系

ところで、脊椎動物になると、神経系の形式が根本的にかわってくる。第一の違いは、神経節が神経細胞の塊りであるのに対して、脳と脊髄は、中心に穴が通っている管の形 式である。第二の違いは、神経節の連鎖は、消化管の腹側にあるのに対して(腹髄という)…

脳の進化

アメーバの偽足を針でついてやると、あたかも針の先をさけるように、偽足を別の方向へのばして逃げてゆく。刺激を受けいれ、それに反応して運動したのである。また、食物のとり こみ、消化吸収、老廃物の排泄などの物質代謝も行なっている。 アメーバは単細…

書ければ話せる

瞬間で勝負をする話術師,タモリは話せるが,書けないという。一瞬一瞬に集中できるが,集中は持続できないのであろう。人はよく私を困らせる質問をする。「先生は,書くこと話すこととどちらが得意ですか」と。だがもっともな質問だ。話し手は書き下手で,…

速話のための速読

速聴と速読を交互に 「どうも私はリスニングが苦手」と悩みを私に告白する学習者が跡を絶たない。 その悩みに答えてみよう。 「集中力がないのでしょうか」,「いや,リスニングをやれば集中力が身につくのです」,「やはり一日中FENなどを聴きっぱなしす…